国旗・国歌の尊重は憲法ではなく教育の場で

憲法で国旗尊重の義務を明記するのはいかがなものか。

産経新聞は80周年記念事業の一環として「国民の憲法」要綱を発表した。尊敬する田久保忠衛起草委員長以下5人の委員とはいずれも昵懇な間柄であるので、批判がましいことはしたくないし、現にこの草案についてはその趣旨や基本的な部分については大賛成であるので、口を慎みたいのだが、この案の第2章(国の構成)第14条(国旗および国歌)についてはいささか疑問を感じる。


東京オリンピック(1964)で掲揚した円の直径が縦の5分の3の「日の丸」。
国旗国歌法で決めたデザインであり、明治3年の太政官布告第651号に準拠。 

長野冬季オリンピック(1998)で掲揚した円の直径が縦の3分の2の「日の丸」。
昭和37年の日宣美展に永井一正ほか2名が共同提案したデザイン。

まず、案の内容をご紹介する。

1. 日本国の国旗は日章旗、国歌は君が代である。

2. 国民は、国旗および国歌を尊重しなければならない。

これについて4月26日の産経新聞は次のように解説している。

第14条で、国旗・国歌の尊重義務を定めた。平成11年、広島県での校長自殺をきっかけに制定された国旗国歌法は「国旗は日章旗とする」「国歌は君が代とする」と規定している。これに対し「以前から、国旗は日章旗、国歌は君が代だった。『とする』はおかしい」との意見が出され、語尾を「である」とした。

私が言いたいのは、国旗・国歌の尊重を憲法で義務付ける必要があるのかという点であり、産経新聞の解説でも見出しで「国旗・国歌の尊重を義務付け」としているが、本文にはない。また、なぜそう提案したのかも書かれていない。おそらくは粗略に扱われることを防止したいからであろうが、寡聞にして世界の憲法で国旗・国歌の尊重を義務付けている例を知らないし、国旗・国歌の尊重は憲法以前のことであり、また、教育を通じて行うべきことであり、いまさら憲法で明記するなどというのは考えようによってはこれは恥ずかしいことではないか。

もとより、私は憲法で国旗・国歌を明記することには賛成である。国が設置した憲法調査会(高柳賢三会長)が1962(昭和37)年に東京で開催した同調査会の中央公聴会(全国各地で実施した公聴会の総まとめのような会合で、NHKが全国生中継)で、中央青少年団体連絡協議会から青年代表として推挙された私は、35分の公述の中で、このことを述べ、それは最終報告書にも掲載されている。

1999年の衆議院内閣委員会の公聴会では元長野冬季五輪組織委員会式典担当顧問の肩書で参考人として招ばれ、同法案に賛成の公述をしたが、これは本来なら憲法で規定すべきことをとりあえず法律で行うことに賛成したまでのことだ。

これに関連して私は、もし、憲法で国旗を規定するならば、円の大きさを東京五輪(1964)のときの縦の5分の3よりも、長野冬季五輪(1998)の時の縦の3分の2のほうがよいと確信するので、新憲法に基づき、国旗国歌法をしかと吟味しなおすべきであると考える。

詳しくは、拙著『日の丸を科学する』(自由国民社)、『日の丸の履歴書』(文藝春秋社)、『知っておきたい日の丸の話』(学研新書)をご参照ください。また、公述については当時の官報に全文が掲載されています。

メニュー