シリア情勢と朝日新聞の社説

4月27日付朝日新聞の社説「シリア内戦 分裂国家に陥らせるな」は「いま一つ」踏み込みが足りない論調ではあるが、基本的にその主張するところには同感である。「いま一つ」というのは、米欧にしかり情報を把握してというのはいいが、日本については何も記述がないというのは、日本の読者が圧倒的である新聞として、不十分ではないのかということだ。また、中国についてもこの問題では触れるべきではないか。


1980年から現在に至るシリアの国旗。
1958~61年にもこの国旗だった。63~72年は中央の星が3つだった。

1932~58年、61~63年のシリアの国旗。
現在は反政府派が共通してこの旗を掲げている。

中東のシリアにこれ以上の内戦と分裂を招いてはならない。ついに、化学兵器が使われた疑いも強まっている。米欧とアラブ諸国は新しい政治体制づくりに、本腰を入れるべきだ。

崩壊が近いといわれたアサド政権がもちこたえているのは、長く友好関係にあるロシアやイランが独裁政権を支えているからだけではない。

変革を担うはずの反体制派がまとまらず、「アサド後」の枠組みが見えないことが新国家を築く機運をそいでいる。

国際的に反体制派を代表するシリア国民連合は3月に暫定首相を選んだが、指名されたのは在米生活の長い無名のビジネスマン。武装闘争をしている国内組からの反目もあり、政治主導の態勢はできていない。

政権の元幹部らが反体制派を率いたリビアと違い、シリアの武装組織には統一した指揮がない。一部の地域では、アルカイダ系のイスラム過激派と共闘しているところもある。

内戦が長引くほど、武装組織が独り歩きし、過激派が浸透する恐れが高まる。それに対抗しようとサウジアラビアやカタールなどが自国の思惑でばらばらに支援していることも、国内の分裂ぶりを複雑にしている。

米欧はむずかしい選択を迫られている。英国とフランスは反体制派へ武器を渡すことを考えているが、過激派の手に落ちる恐れもあり、踏み切れない。

米政府は本格支援を何度も検討したが、長い戦争に疲れた世論を背景に、ホワイトハウスがブレーキをかけてきた。おもに食糧や薬などの人道支援にとどめている。

だが、いまや隣のレバノン、トルコ、イスラエルにまで戦闘の余波が広がる。難民はすでに100万を超えた。

これほど問題が広がっても腰を上げないようでは、米国は中東和平の仲介役としての信頼性にも疑問符がつきかねない。

米欧は現場の情報を集め、穏健な勢力を選んで支援を強めることで、民族や宗教、宗派をつつみこむ国へと政治プロセスづくりを急がねばならない。

周辺国とシリア国内各派の利害が複雑にからむパズルを解くには、地元のアラブ連盟とトルコの協力も欠かせない。

米欧・アラブ・トルコが結束を示せば、やがては、渋るロシアを「アサド後」構想に引きよせることにもなるだろう。

遠い国の荒廃が、やがては地球をめぐって自国の安全に影を落とす。9・11テロ以来、世界が学んだ教訓がいま、シリアで問われている。

シリアの国旗は赤と緑の色を交代すれば、よく似た旗になる。双方がこの旗を掲げて、戦争法を軽視した死闘を繰り返して数万人もの死者を出している状況を、主要国は援助だけではなく、解決に向けた外交努力をもっと、積極的に進めるべきではないのか。日本もまた「アジアの一国」というなら、その仲介を図ることもあっていいのではないか。

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