オリンピックの旗手という役割 – どうなる2020年

バスケットボール女子ロンドン五輪最終予選でトルコがアルゼンチンに完勝し、初めて五輪切符をつかんだときのことを、1月23日の朝日新聞夕刊にこんな風に書いてある。昨年6月、トルコの首都アンカラにある1万人収容のアンカラ・アリーナでの出来事だ。


2020年五輪招致大使も務める人気バレーボール選手のネスリハン・ダルネルさん(朝日新聞の記事より)

ロンドン五輪開会式での吉田沙保里旗手

(会場は)観客で埋め尽くされた。耳をつんざく国歌の大合唱。

この勝利はトルコのスポーツ界にとって歴史的な意味があった。初めて五輪代表の女子の数が男子を上回ることが確定したからだ。

選手団の旗手にも選ばれたのは、バレーボール女子のスターであるネスリハン・ダルネル選手(29)。「女性であり、母だから」。クルチ・青年スポーツ相は理由をそう話した。

「鳥肌が立つような経験でした」。世界選手権で最多得点に輝いたこともあるダルネル選手は、五輪の開会式を振り返る。2006年に結婚。08年に長女ペネロペちゃんを出産すると、すぐに復帰した。イスラム圏のトルコでは珍しいママさん選手として活躍する。

「私のファンは女性のほうが多いかもしれない。自分の人気を利用して、トルコでも女性が仕事と家庭を両立できるんだと証明したい」。スポーツだけにとどまらない自らの役割を認識している。

トルコは国民の99%がイスラム教徒だが、女性の社会進出は比較的進んでいる。1923年に建国し、政教分離を憲法で定めた。「あのときに男女平等教育を勝ち得て、どんな職業にも女性が参加している」とマルマラ大学のアイシェ・ドゥラクバシャ教授は話す。特に医者や弁護士など専門職では女性が多く、企業の最高経営責任者(CEO)の女性比率は12%で世界のトップクラスだ。

ただ、トルコ全体を見渡すと、男女平等はまだら模様だ。特に国土の大半を占めるアジア側のアナトリア半島ではイスラムの伝統的な考え方が残る。10代で親から結婚を強制される女性も多い。

この記事、実はわかりにくい。「ネスリハン・ダルネル選手はバレーボールの選手なのに、バスケットボールの試合の開会式で旗手になったのか?」と私は読んでしまった。どうやら、2012年のロンドン五輪開会式で旗手だったということのようだ。

何はともあれ、旗手というのはおそろしく緊張するようだ。私も東京五輪や長野での冬季五輪の開会式で、各国選手団の旗手に国旗を渡す場に立ち会ったが、その緊張振りは試合以上ではないかと思われる人が多かった。

そんな場面に、政教分離のトルコとはいえイスラム信者がほとんどというトルコで女性の旗手が選ばれたというのは、2020年の五輪開催地を争う相手としては、向こうが一枚上手かなと一瞬思ったが、いやいや、日本選手団は開閉会式とも旗手は吉田沙保里。JOCが吉田選手を旗手として指名したとき、「旗手は熱望していた。金メダルをとれないというジンクスを打ち破る」と述べ、自らを一層奮い立たせ、アテネ、北京両大会に続き、ロンドンで見事に五輪三連覇を達成した。

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