労働者と農民を表す国旗

1917年のロシア革命で、ロシアでは帝政時代の国旗(現国旗と同じ)から赤旗に激変した。多少の紆余曲折や微調整はあったが、1923年12月に採択されたこの旗が、1991年12月25日にソ連が解体され、クレムリンの国旗掲揚塔からこの旗が降ろされるまで70年近く「君臨」した。


ソ連の国旗

ソ連の国章。社会主義・共産主義の「理想」が世界に広がるようにという思いをそのまま国章に表していた。

1949年から56年の「ハンガリー動乱」までのハンガリーの国旗

「ハンガリー動乱」でいかにもソ連を連想させる国章を取り除いた国旗となった。現在のハンガリーの国旗。

1970~91年のコンゴ人民共和国(現コンゴ共和国の国旗)

現在のコンゴ共和国の国旗。1960年の独立以来10年間掲揚された国旗に戻った。

ソ連国旗の鎚と鎌が労働者と農民を表わすことは言うまでもない。この印を真似たさまざまなデザインの国旗や国章が、同様の「理想」を掲げる諸国に強い影響を与えた。

代々木に本部を置く日本共産党の党章は今もって鎚と鎌であり、先月、習近平を最高指導者に選んだ中国共産党も、舞台の背景に鎚と釜の大きな印を掲げた前にずらりと幹部が並んだ中での党大会であった。

ハンガリーの国旗には共産化以来、鎚と麦の穂を主体とする国章の付いたものだったが、1956年の「ハンガリー動乱」で、露骨な国際共産主義色を薄めようとして、国旗から国章を取り外した。


北朝鮮の国章

水豊ダムと水力発電所。ダム湖のさきには白頭山。さらにその上には、交戦を放つ赤い星。全体が稲の束で囲まれており、ハングルで「朝鮮民主主義人民共和国」と国名が書かれている。「朝鮮」以外は日本語から「輸入された」単語。

この国章は東側諸国の国章と同じようにソ連の国章に基づいて作られており、赤い星は共産主義のイデオロギーとそれが五大陸に伸張することを、ダムと稲穂は工業と農業を表している。


1964年の独立以来のザンビアの国章

鋤(すき)と鶴嘴(つるはし)が描かれている。農業の振興と世界有数の銅鉱山を誇る国らしく、その採掘用具のシンボルとしての鶴嘴である。この国章もソ連国旗の影響を大きく受けたデザインといえよう。


1990年以来のアンゴラの国章

歯車、主食のトウモロコシと、コーヒーの枝に囲まれた中に、鋤とマチェーテと呼ばれる武具であり草刈具、そして書物が描かれている。これらが、労働者、農民、軍人、知識人の象徴であることは言うまでもない。コーヒーが国旗や国章に登場するのは墓に例がない。アンゴラやモザンビークは形式上、植民地ではなく、ポルトガル本国と同等の海外領土であるとされてきた。このため、1959年のポルトガルの開発計画により、アンゴラには5,000万ポンドが投資され、ポルトガル人の移住が奨励された。かくして、ポルトガル人農園主の経営するプランテーションで栽培されたコーヒーがアンゴラ最大の輸出品目となったのであった。

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