5円硬貨と国旗②


アンゴラの国旗

アンゴラの国章

アフリカ南部にあり大西洋に面しているアンゴラは日本の約3倍もの面積があります。1800万人という人口はブラジルに次ぐポルトガル語圏第二の多さです。そのポルトガルからの独立をめぐり、そしてまた独立以来も、豊かな地下資源を求め、また、冷戦の代理戦争として、さまざまな勢力が入り混じって内戦を繰り広げました。ポルトガル本国では1974年に勃発した「カーネーション革命」により、長く続いたサラザールの独裁政権が潰え去りましたが、アンゴラでは独立を求める三派間による複雑な勢力争いが行われました。ようやく、1975年11月11日、MPLAアンゴラ解放人民運動(独立の2年後にNPLA労働党=MPLA-PTと改称)が首都ルアンダでアンゴラ人民共和国の独立を宣言することができたのでした。

しかし、MPLAに主導権を握られるのを嫌った①ザイールとともにフランスが支援するアンゴラ国民解放戦線 (FNLA)、②軍を派遣して直接介入した南アフリカ共和国が、③南アとともにアメリカが支援したアンゴラ全面独立民族同盟 (UNITA) 連合、④キューバ軍が直接介入し、⑤キューバとともにソ連が支援するアンゴラ解放人民運動 (MPLA)、⑤これまた直接軍事介入したザイール(現コンゴ民主共和国)が複雑に絡み合った形での間で内戦状態に陥ったのでした。

ただ、独立とともにかつてポルトガルから入植した人50万人とも言われる人々の本国やブラジルへの帰還や引揚・移住、戦争による基礎的なインフラの破壊、農地の荒廃、対人地雷の蔓延、教育の立ち遅れなどによってアンゴラ社会は泥沼常態に陥ったのでした。

1979年9月、第2代大統領にジョゼ・エドゥアルド・ドス・サントスが就任し、ソ連やキューバなど社会主義陣営との結びつきを強め、MPLAによる一党制による社会主義建設を目指したのでした。

FNLAはやがて弱体化し、外国の軍隊も次第に撤退し、当時、事実上、南ア領だったナミビアの独立を交換条件に、最後まで残ったキューバ軍も撤退しました。外国軍の撤退後、ソ連をはじめ東側の勢力が困難な情勢に立ち至ったことに呼応して、アンゴラのMPLA政権は1990年に社会主義路線を放棄し、翌年には複数政党制の導入を決め、旧宗主国ポルトガルの仲介を受け入れ1991年5月、MPLAとUNITAがリスボンで和平協定に調印するに至りました。

しかし、それでも戦火はやみませんでした。1992年の大統領選および議会選をめぐる対立から再び内戦に突入したのです。今度は、国連の仲介で1994年11月に和平が成立しましたが、1998年に武装解除に抵抗したUNITAが再蜂起し、再び内戦となりました。

密輸ダイヤモンドを資金源にUNITAは政府軍と衝突を続けましたが、2002年2月に指導者サヴィンビ議長が戦死し、4月4日に休戦協定が結ばれました。内線は実に27年間に及んだのでした。

喜ばしいことに、これでその後の武力紛争はほとんどなくなり、最近の約10年間は石油やダイヤモンドなどの豊富な資源を背景に、急激な経済発展を続けています。個人所得は6千ドルを超えています。ただ、世界で最も多いと推定されている1000万を超える対人地雷やルアンダの物価が世界一高いなど課題もいろいろあります。特に地雷は国土の3分の2を使用を指南イしており、日本の3倍の国土とはいえ、実際の面積は日本と同じくらいということになってしまっています。

アンゴラの国旗と国章にはマルクス主義のモチーフが強く反映されています。国章の中央にはマチェーテ(鉈の一種)と鍬があり、独立当時の革命と、農民を表しています。星は社会主義の象徴であり、進歩を示しています。旭日は新たな出発を表し全体が、コーヒーの生産を表す枝と労働者を表す半形の歯車とで囲まれています。下部の本は教育の振興の大切さ象徴です。

国旗はMPLA-PTの党章に由来し、同党は独立以来、一貫して政権を担っています。また、今でも社会民主主義政党の国際団体である社会主義インターナショナルに加盟しているように、名実ともに社会主義を放棄しているとはいえないあたりが、依然として国旗を変更できないでいることにも現れているといえましょう。

さて、5円硬貨ですが、これはあまりに時代遅れ。いまこれを欧米にお土産に持って行ったとしたら、「テディ、あんたの国・日本は、昔、社会主義政権だったのかい?」と訊かれそうだ。

戦後、日本に社会主義政権が出来たのは、片山哲を首班とする内閣(1947年5月24日~48年3月10日)のときのみ。5円硬貨がこんな社会主義的なモチーフになったのは、その後もそれなりの勢力であった日本社会党へのある種の共感かへつらいがあったからではないでしょうか。

5円硬貨、もう、デザインを変更していただきたいものです。

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