朝日歌壇に興味深い入選歌

日本の国旗を燃やすデモ隊の国旗は買ったものなのだろうか

摂津市 内山豊子

これは10月14日付朝日新聞の朝日歌壇の入選歌である。選者の高野公彦さんは「反日デモを見ながらふと浮かんだ不思議な想念。意表を衝かれる歌である」。

8月19日発の共同通信は「広東省では日の丸燃やす」として以下の記事を送稿している。

【深セン、杭州共同】香港の活動家らが上陸した沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)の中国領有権を訴える反日デモが19日、広東省の深セン、広州や浙江省の杭州、温州、四川省成都など中国の約20都市と香港であった。深センでは一部が暴徒化、日の丸を燃やしたほか、日本車十数台を次々に壊し、日本料理店にも乱入して破壊した。邦人に被害が出たとの情報はない。日中関係がさらに冷え込むのは必至。

また、同じ日の日経新聞は次のように報じている。

フォームの終わり【広州=桑原健】中国の広東省広州市で19日午前、沖縄県の尖閣諸島に上陸した香港の活動家らの逮捕に反対する大規模な反日デモが起きた。午前9時過ぎから100人以上が総領事館の入居するホテルの門の前に詰めかけ、「釣魚島(尖閣諸島の中国名)を返せ」「日本人は出ていけ」「日本製品を排斥せよ」と大声で叫んだ。日の丸を書いた紙にバツ印をつけて燃やしたり、デモを見物する人々に中国の国旗を配ったりもした。その後、人数は数百人に膨らみ、横断幕を掲げてホテル周辺を行進した。

「今回のデモは明らかに中国政府が誘導した<官制デモ>だ」。Newsweek(10月10日号)で、湖南省出身の李小牧氏が書いている。「商務省次官が日本製品のボイコットを容認したり、外務省報道官が<破壊活動の責任は完全に日本側にある>と発言するのは、中国人民に非合法な行動を遠慮なくやれ、と焚き付けているに等しい」。

割り当てて動員された参加者、配られた国旗、指示されたコース、中国各地での一連の「反日デモ」は決して愉快ではないが、暴発や暴走がないことを願いつつ、「ご苦労さま」というほかなかった。11月に行われる中国共産党の大人事異動、政権譲渡を前に権力闘争がらみのさまざまな出来事が起こっているようだが、所詮、民主主義の未発達のところに、先進国のようなデモなどありえない。「官制」デモに参加した人たち者の本音は案外(案の定?)、別のところにあるのかもしれない。

短歌の作者が思ったのは、自分で「五星紅旗」の国旗を購入し、持ち込むなどということはありえないのでは、ということだろう。そこを衝いたこの短歌に、私も拍手を送りたい。

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