国旗を焼いたり損壊することはいけません①


中華人民共和国(中国、中共)の「五星紅旗」

各地で国旗が焼かれたり、汚濁、損壊、侮辱される行為が増えている。ゆゆしきことである。「日の丸」が対象となった場合には、当該国に対し、外交ルートを通じ、厳しく抗議すべきである。

自国の国旗や外国旗の損壊について厳しく規制している国もあれば、自国の国旗にのみ損壊罪を設け他国の国旗については何の規制もしていない中国のような国もある。

わが国は刑法92条1項で、外国に対して侮辱を加える目的で、その国の国旗その他の国章を損壊・除去・汚損する罪を国交に関する罪の1つとして定め、2年以下の懲役または20万円以下の罰金を課すことを定めている。但し、現行刑法同条2項で、本罪は外国政府の請求がなければ公訴を提起することができない、としている。

しかし、自国の国旗については同様の罪を定めていない。刑法改正の1つの課題とされている。

この罪を論じるときに引き合いに出されるのが、1958(昭和33)年5月2日、長崎市で中共(中華人民共和国についての当時の日本での呼び名)の「五星紅旗」が引き摺り降ろされる事件。

場所は市内の浜屋デパート4階催事場。日中友好協会長崎支部主催による「中国切手・切り紙展覧会」が開かれていた会場の入口付近の天井から、「五星紅旗」(縦120cm、横150cm)が針金で吊るされていた。朝日新聞によれば主催者は「会場の展示物が全部中共のものなので一つは雰囲気を出すためと、一つは切手同様の展示品の意味合いがあった」と語ったとのこと。

一方、この展示会場の国旗掲揚については、当時、日本と国交があり国連安保理常任理事国でもあった国府(在台湾の国民党政権による政府。中華民国政府)の在長崎領事館からは「国際法上非合法な国旗であり、掲揚は日本と国府との友好関係に悪影響を与える」との警告が発せられていた。

この日、右翼団体に所属する日本人製図工の男(28)が会場に乱入し、件の「五星紅旗」を引きずり降ろした上、毀損した。ただし旗布は破られていなかった。

男は即座に警察官に拘束され、器物破損で書類送検された。これは、当時、わが国が中共未承認で、「五星紅旗」は国旗としての保護の対象ともいなされないからであった。このため刑法で規定された外国国章損壊罪(外国政府による親告罪)よりも軽い処分となり、同8年12月3日、男は軽犯罪法第一項の「みだりに他人の看板を取り除いた」ことにより、500円の科料とする略式命令となった。

これに対し、中共政府は、事件発生直後から、日本政府及び当時の岸信介首相の対応を厳しく批判し、制裁行動に出た。すなわち、5月9日には陳毅副総理兼外交部長が対日貿易を中止する旨の声明を出し、当時進められていた対中共鉄鋼輸出契約が破棄された。その後、1960年12月に「友好商社」に限定した取引が再開されるまで、約2年半にわたって貿易停止に陥った。この通商断絶によって、一部、中共貿易に依存体質だった商工業者は少なからざる打撃を受けた。

ただし、朝日新聞の社説(1958年5月11日)によれば、「外国国章損壊罪」の判例はないが、通説として「保護すべき国旗とはその国を象徴するものとして掲揚される公式の国旗のみを指し、装飾としての万国旗や歓迎用の小旗もしくは私的団体の掲げる旗は含まれない」として、今回の事件の国旗は「会場の装飾」にすぎず、中国側の反応は過激すぎると批判した。

岸首相が国会答弁で、長崎国旗事件は当該旗を国旗と見なさないという立場で対応したこと明らかにしたように、刑法92条の適用はなかった。

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