チャイコフスキー作曲「大序曲 1812年」の世界を再現 – ロシア

今年は、ナポレオンがモスクワを攻め、ロシアの捨て身の防衛戦で撤退を余儀なくされてから200年。元旦からそんあ思いでいたところ、猛暑の東京を逃れ、偶然、手にした信濃毎日新聞に、時事通信からのこんな記事が出ていました。

ロシアのコサック騎兵隊がモスクワからパリまでの道をたどる「友好の行軍」を開始した。妬く2500キロを踏破する大掛かりのイベントで、ロシア政府も全面支援している。

ナポレオンが極寒の代名詞「冬将軍」等によって敗走したロシア遠征は、ソ連・ロシアで「祖国戦争」と呼ばれ、第2次世界大戦を指す「大祖国戦争」と同じく、今もロシア人の愛国心を鼓吹する象徴。

文豪トルストイの長編小説『戦争と平和』の題材としても知られる。

コサックの23人は12日、当時さながらの軍服姿で、モスクワの「凱旋門」に近い戦勝記念公園を出発。一行は1812年9月にモスクワ郊外で繰り広げられた最大の激戦「ボロジノの戦い」に合わせ、双方の戦没者を追悼し、平和の尊さを訴える予定だ。

この記事を読んでいて、私はチャイコフスキーの「大序曲 1812年」が聴こえてくるような気になりました。私は少年期からこの曲が大好きで、聴いていると今でも自分が指揮をしている気分になり、挙句はナポレオンになったり、クトゥーゾフ将軍になったり、やがて敗走するイケメンのフランス青年将校になったりするのです。


モスクワを攻略したナポレオン

冬将軍の到来で退却するナポレオン

曲は、ヴィオラとチェロのソロによるロシア正教会の聖歌「神よ 汝の民を救い給え」にもとづく変ホ長調の序奏に始まり、木管と弦の交互の演奏に移ります。オーボエ、ついでチェロとコントラバスの掛け合い、さらには、ロシア軍の行進を思わせるティンパニーの弱いトレモロに始まるクレッセンドで、盛り上がります。次に、ボロジノの民謡による主題が「ボロジノの戦い」を思わせます。ここでは勝利したフランスの国歌「ラ・マルセイエーズ」がホルンを中心とする、金管楽器群で反復して奏でられるのです。

各楽器による複雑な展開と合奏による激しい響き合いが終わると、緩やかな第二主題が現れ、ロシア民謡風の曲も混じってきます。「ラ・マルセイエーズ」も繰り返し出てきますが、各パートを転々としながら次第に弱くなり、コルネットとトロンボーンで緩やかな演奏になり、その後で、それらを圧する全オーケストラの咆哮となります。自衛隊の演習場で行われる音楽隊の演奏では実物の大砲がこの部分で5回空砲を発射する。これは、初演でそうだったとも、チャイコフスキーがそうしたかったが実現できなかったともいわれている。

やがて勝利と平和を思わせる旋律となり、鐘が華麗に演奏を飾ります。実際に教会の鐘が一斉に突かれたという話もあります。

最後は、全楽器の強奏で始まり、ロシア帝国国歌が低音の管弦楽器群によって演奏され、鐘が鳴り、大砲も轟く中で終演となります。

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