伊藤博文の「日の丸演説」②

話を戻します。

日本政府が公式に派遣する岩倉使節団は総数100名(内、正式な使節団員は46名)を越す一台デリゲーションでした。一行は、1871(明治4)年12月23日、蒸気船アメリカ号に乗って、横浜を発ち、翌年1月15日にサンフランシスコに到着、その後、アメリカは約8ヶ月滞在し、大西洋を渡りました。

団長は、岩倉具視(ともみ)特命全権大使(1825~83)、依然、丁髷(ちょんまげ)を結ったままのお公家さんです。


前年の1871年に太政官布告第57号で定められた日本の国旗。

ネブラスカの州昇格で37星になった当時の米国旗(1867~77)。

晩年の伊藤博文

岩倉使節団メンバー。左から木戸孝允、山口尚芳、岩倉具視、伊藤博文、大久保利通 

1871(明治4)年11月12日、横浜港を出発する岩倉使節団。山口蓬春画。

サンフランシスコ到着は明け方だったようですが、金門橋をみた一同は「景色ウルワシ」と感嘆の声をあげたのでした。連日、歓迎攻めと視察に明け暮れましたが、23日夜8時からはひときわ大きな歓迎宴が開かれたのです。

席上、答礼のスピーチを行った岩倉に続いて、弱冠31歳の伊藤博文(1841~1909)特命全権副使が壇上に上がり、約300人の貴賓を前に、なんと(は余計か)、英語で話しはじめたのです(昔の人は偉かった!)。

確かに、ネイティブも真っ青というほどペラペラ…というわけにはいかなかったようですが、彼は、長州藩士の時代にイギリスへ密航した経験があり、そこそこ聞き取れる程度ではあったとか…。

別に英語の速記録が残っているわけではないのですが、NHKの番組「英語でしゃべらナイト」が訳出したところに拠れば、ざっとこんな感じだったようです。スピーチの文章は、明石 康『サムライと英語』(角川書店)に拠ります。そこで、さっそく、明石さんに電話で確認してみました。私にとっては秋田高校の10年先輩として、日頃、ご指導いただいていますので、気安く電話させていただきましたが、「これは『英語でじゃべらナイト』の番組をもとにしたもので訳出については、NHKのNさんに訊いてみてくれ」。そこでNさんに伺ったところ、英文の速記録があるわけではないので、日本語の原文から英語訳と現代日本語訳を付けたものということが判りました。

何はともあれ、この英文で、雰囲気だけは少し汲み取っていただけますでしょうか。

「What country in the middle ages broke down its feudal system without war?
 ’Foreign customs are now generally understood throughout Japan.
Today it is earnest wish of both our government and people to strive for the highest points of civilization enjoyed by more enlightened countries. Looking to this end, we have adopted their military, navel, scientific, and educational institutions, and knowledge has flowed to us freely in the wake of foreign commerce.’

他のいずれの国が、戦争なくして中世の封建制度を打破することができたでありましょうか。今や外国の風習は、日本全国に広く行きわたりつつあります。今日、わが国の政府および人民の希望は、先進諸国の持つ文明の最高点に到達することです。この目的に向かって、わが国は陸海軍、学校教育の諸制度を整えています。また、外国貿易が発展するに従い、知識も自由にわが国に流入しています。

Within a year a feudal system, firmly established many centuries ago, has been completely abolished, without firing a gun or shedding a drop of blood. These wonderful results have been accomplished by the united action of a Government and people, now pressing jointly forward in the peaceful paths of progress. What country in the middle ages broke down its feudal system without war?」

数世紀にわたって強固に続いてきた日本の封建制度は、一発の弾丸も放たず、一滴の血も流さずして、わずか一年以内に撤廃することができました。この驚くべき事実は。政府と人民との共同行為によって達成されたものであり、両者は今や一致団結して平和の道を進みつつあります。他のいずれの国が、戦争なくして中世の封建制度を打破することができたでありましょうか。

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