自由の象徴「フリギア帽」の物語

ドラクロアの「民衆を導く自由の女神」、ボリビアの国旗に描かれている国章にも見られる「フリギア帽」を被ったマリアンヌが中心です。マリアンヌは「自由の女神」であり、共和制フランスを象徴する女性像、もしくはフランス共和国の擬人化されたイメージといえましょう。

1999年9月、フランス政府は新しい識別章を採用しました。これには、共和国のモットー「自由・平等・博愛 liberté, égalité, fraternité 」、三色旗、そしてマリアンヌがシルエットで抜かれています。そのくらい親しまれているのがマリアンヌです。フランス革命当時、「フリジア帽」はサン・キュロット(貴族の服装である半ズボン・キュロットを穿かない階層、すなわち職人など労働者)の象徴とされ、その後も、国璽、硬貨、切手などに描かれたり、公的施設に彫像として置かれたりして、自由の象徴としてフランス人にはとても親しまれています。三色旗とともに、1789年以来のフランス革命のシンボルです。

ニューヨークの「自由の女神」像は合衆国の建国100周年を祝ってフランスから贈られたもので冠を被っていますが、マリアンヌは通常「フリギア帽」を被った姿で登場します。前8世紀に今のトルコのフリギア地方(小アジア半島のほぼ中央部)が栄えた時代に流行った、先の曲がった三角帽子です。ギリシャの肖像では、フリギア人に限らず、トロイアの王子パリスや東方に由来するミトラス神も「フリギア帽」を被った姿で信仰の対象とされました。これがローマ時代には解放された奴隷の被り物になったのですが、近代に至って自由を求め、革命に参画する人たちの象徴となったのです。

特に、1830年のフランス7月革命の様子を描いたこのドラクロアの絵で、フランス市民革命の象徴となり、当時、次々に独立していった中南米国々の国旗や国章に頻繁に登場するようになりました。ハイチ、ニカラグア、エルサルバドル、ボリビア、パラグアイ(裏)の国旗の中の紋章に登場し、国章としてはキューバ、コロンビア、アルゼンチンなどにも出てきます。

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