旗という字

旗は集団や国家の象徴、権威の表示、所属の表示、到達すべき目標、儀式などでの装飾などの目的で使用されます。中国は旗が最も早く進化した地域でした。最近の考古学や歴史学の成果によると、周の開祖・武王(紀元前12世紀ごろ)が白い旗を用いていましたが、おそらくこれが中国における国旗の一番古い使用例ではないかといわれています。当時はさまざまな形状のハタが王や軍によって掲げられたようです。

『大百科事典』(平凡社)には「唐の高祖・李淵の従弟の李壽(577~630年)の墓に描かれた旗」の写真が掲載されています。巨という字の右の縦棒をとったような、旗の端がいくつにも分かれたデザインの赤い旗です。

旗を表す文字、旗にまつわる漢字の種類は多く、使用者、使用目的、形などにより文字の使い分けがなされていました。漢字では「旗」から「其」を除いた部分、そもそもハタを意味し、「其」の部分はその読みを表すものです。国旗、校旗、旗幟鮮明、旗艦などとして用いる「旗」は、狭義には熊や虎を描いた赤いハタで、帥都(大将)が兵の集合を命ずるときを示すものを指しました。清の太祖が1616年に制定した、全満州族を8つの旗色で区別した軍団の総称「八旗」がよく知られています。

「幢」「幡」「旌」「幟」もよく用いられていました。「幢」は絹の幕で筒型に包んで垂らした飾りです。「幡」はもともと仏教用語。供養のための荘厳具をさしていました。「旌」は旗竿の先に(カラウシの尾)などを飾った旗。天子が士気を励ますために用いたのが始まりです。『源平盛衰記』には「旌の足を見て、五十騎三十騎馳集る」という具合にも用いられています。

では、「旅」や「族」はハタとどう関係するのでしょうか。ほかかにも「施」「旋」などが日常的に使用されていますね。旅行、旅館、旅団などと用いられる「旅」は、「多くの人が軍旗をおしたてて行く」の意から、旗を掲げて「連れ立って歩くさま」を表しています。また、「族」は家族、遺族、民族、貴族、血族、豪族などとして用いられ、「軍旗のもと多くの矢があつまるさまから、集まること」を表す、すなわち、同じ旗のもとに守りぬくべき集団を表す文字です。

「施」は実施、施策、施主などとして用いられ、うねりゆらぐ旗のさまから「次第に及んでゆく、うつる、ほどこすの意味を表すのです。旋律、斡旋、凱旋、旋回、旋盤などの「旋」は「ふきながしがめぐるようにぐるぐる歩き廻るの意味を表す」(「」内は、大修館書店『漢語林』)。…など漢字にはハタの形や用途を表す文字がいろいろあります。詳しくはぜひ、お手元の漢和辞典を引いてみてください。主に周代(前1100頃~前256)の官制を記した『周礼』には先秦時代(221年の)統一以前の旗の種類や用途についてのさまざまな記載があります。

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