ガンジーの理想主義とネールの現実主義

世界最大の民主主義国家で、宗教に束縛されない、高度成長国家、インドの魅力は今世紀に入って一層高まっています。これまで、日印関係はどちらかといえば稀薄でしたが、今や、急接近が始まっています。それは中国を挟んでの地政学的な視点、優れたIT技術、世界に定住し活躍している印僑(在外インド人)たちと新世代のグローバルな企業人たち、そして巨大な人口としての市場価値…インドはブラジル、ロシア、中国と並んで、BRICsの1つとして期待されています。いうまでもなく、BRICsという言葉は2003年秋、アメリカの証券会社ゴールドマン・サックス社が、投資家向けにまとめた報告書で用いて注目されて以来、21世紀に世界経済の大きな牽引力となるであろうと期待されている4カ国のことです。日本でも、これまで、いささか軽視してきた感のあるインドへの関心が日々高まってきています。

国連人口基金(UNFPA)によれば、インドの人口はまもなく中国を抜き、14億になると推計されています。また、中国の人口は2016年がピークで、しかも高齢化が進むと推計されています。一方、インドは人口の半分が25歳未満と人口構成が若いという特徴を持っています。インドの人口は2059年に17憶に達しますが、これは1900年、つまり19世紀最後の年の世界の全人口に匹敵するものです。


インドの国旗。

インドの国章。
下の文字は「真実のみが勝利する」。

1921年にガンジーが示した旗

1931年に採択されたスラワジ運動の旗

インドの国旗は、サフラン(オレンジ)、白、緑の横三色旗。サフラン色は勇気と犠牲、白は心理と平和、緑は公正と騎士道を表わしているとされていますが、別の解釈ではそれぞれヒンズー教、仏教、イスラム教を表わします。仏教とひとまとめに書いてしまいましたが、妻財の信徒を持つヒンズー教、それに次ぐイスラム教以外の、仏教、ジャイナ教、シーク教、キリスト教など「2大宗教」以外の宗教ということです。この白によって、インドが特定の宗教国家ではなくすべての宗教に寛容な世俗国家であることを示しているのです。

世俗国家というのは、世俗主義Secularismを国家運営の基礎とするもので、この考え方では、国家の運営や決断が、特定の宗教の影響を受けずに、事実や証拠といった客観的な視点に立ってなされるべきだという主張であり、宗教が迷信とドグマを強調して他の宗教を排斥し、理性や科学的探求を軽視するために政策運営を誤ったり、人類の進歩を阻害するようなことを嫌悪し、排除するということです。

特定の宗教に特権的地位を与えたり、財政上の支援や優遇を与えないこと、すなわち、政教分離であり、個人が宗教的規則や宗教教育を強制されず、信仰(信教)の自由が保障されている、それがインドの国歌の基本原則であることをこの国旗は示しています。したがって最近でも、大統領がムスリムで、首相がヒンズー教徒、国防大臣がカトリック信者ということがありました。ターバンを巻いてあまりひげを剃らないシーク教徒も軍隊をはじめさまざまな分野で活躍しています。

その点が隣国「パキスタンイスラム共和国」とは大きく違うところです。パキスタンの国旗は緑地に三日月と星です。これはまさにイスラム国家を象徴するものですが、それでも竿側に「他の宗教を信じる人々への寛容」を示す白い帯を付けています。


パキスタンの国旗

ガンジー

糸紡ぎ車を操るガンジー

インドの国旗は1947年7月22日、初代首相のジャワハルラル・ネール(1889~1964)の提案により制憲議会で採択されたものです。ネールは「中央のしるしは法の輪(チャクラ)であり、古代インドのアショカ王の第3回仏典結集の記念塔からとったもの」であると説明しました。


ネール

これより先の1931年、インド国民会議派は同党の党旗からヒントをえて、現在の旗のチャクラを手紡ぎ車(チャルカ)にしたものをインドの旗として準備したのでした。それはマハトマ・ガンジー(1869~1948)の提唱する国産品奨励(スワデーシー)運動のシンボルでした。ガンジーは自ら、自室や路上でインド古来のチャルカを回して糸を紡ぎ、それによってランカシャーの綿織物を駆逐し、イギリスから経済的に自立しようとしたのです。それでなくてはインド人が綿花を栽培し、それをイギリス人が持ってゆき、ランカシャーの棉布工場で製品にし、またインド人が買わされるという悪循環に陥ると説いたのです。

しかし、この糸紡ぎ車はいかにも貧相であり、この形では国旗の表裏が別になること、ガンジーの政策自体が世界の経済学者から批判されたことなどもあり、名門の出身であり高い教育を受けたネールの好みに合わなかったか、1947年には法の輪(チャクラ)に変更されたのでした。

ところで、その「法輪(法の輪)とは?」と訊かれるともう、著者のような俗人には手が出ません。ですから、日本の仏教寺院のほとんどが参加している全日本仏教会のHPに寄ることにします。

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法輪は、仏教のシンボルの一つであり、仏さまの教えを意味しています。dharmaとは法、仏の真理・教えのこと。chakraとは古代インドの王が持っていた円盤形の武器を指すと言われています。王がこの武器をころがして自由自在に敵を撃破するように、仏さまの説法も私たちの迷いを破り正しい仏の道へ導いてくださいます。ここから仏さまが説法することを転法輪(てんぼうりん)といいます。チャクラの輻(や)が24本なのは1日が24時間であり、それが円状に連なることで、輪廻思想の完全さを表していると言われています。

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