赤十字の標章には厳格な使用制限が


この標章、軽々に使ってはいけません。
日赤と自衛隊衛生部隊の専用です。

2007年、赤十字のマーク(標章)を使っているこのイラストの入ったチラシが大量に出回ったのですが、法律に抵触することを知り、すべて回収されました。これはさすが「天下の電通」、誤りはいけませんが、それに気付いて即応したのは立派です。世間には、勝手に赤十字のマークを使っている薬局、医院、ペットクリニックなどが、「ゴマン」とあるからです。

私は4半世紀ほど前に、この関係の論文を日赤中央女史短大の「紀要」に執筆したことがありますが、日本での濫用はまったく改善されていません。

私は例の「安全第一」の緑十字のマークも条約の精神から言えば芳しくないと考えます。少なくとも、暗いところで見たり、モノクロの写真や視覚障碍者(色弱者)には赤十字と区別ができないからです。

また、赤十字のマークはスイス国旗の逆なので本来、「白地赤十字」でなくてはならないのです。なんらかの都合でそれができない場合には、「白で縁取られた赤十字」でなくてはならないのですが、このことも日赤本社の正門や各日赤病院をはじめ、日赤の各施設できちんと守られていないのは、遺憾です。「紺屋の白袴」というべきか、これでは指導監督力も不十分になるというものでしょう。

重要なことは、さきほどのケースも匿名の方からの指摘だといいいますが、日赤自体がもっと標章の管理に責任を持ち、使用に関する広報に努め、場合によっては個別に警告ないし申し入れをすべきだということです。

赤十字の標章(マーク)はジュネーブ条約(現行の同条約は1949年に締結、日本は51年に加入)により、戦時にあって特別な保護徽章とされるため、各国で厳重に管理されています。

わが国でも当然、特別扱いすべきことを法的に定めています。「赤十字の標章及び名称等の使用の制限に関する法律」です。この法律によって、日本赤十字社と自衛隊の衛生部隊でしか使用できないのです。

ところが、朝日新聞(2007年5月23日付)によれば、中日本と西日本の高速道路2社が電通関西支社に制作を依頼したチラシに、この使用禁止の赤十字マークが印刷されており、回収されるという騒ぎがありました。

名神高速道路と東名阪自動車道の集中工事を知らせるため配布した2種類のチラシ計約100万枚に赤十字マークが使われていたというのです。

赤十字マークの使用制限について、取材に応じた電通関西支社の担当者は知らなかったと答えたそうです。

この一件は、西日本高速道路への匿名電話で発覚。同社などは日本赤十字社に謝罪し、「数百万円」かけてつくり直したチラシを、誤ったチラシの回収袋とともに関係先に郵送する作業を続けたそうです。

一方、テレビで流す工事の告知CMにも赤十字の標章が入っていたため、これも放送直前に急きょ差し替えたと報じられています。

それにしても、ビラは100万枚も作成されたそうですから、全国に、医療従事者を含め4万数千人いる日赤職員の目に入らなかったわけがありません。日赤全体としての問題意識の低さです。

参考のために、法律の全文を紹介します。日赤の全職員はしっかりと、一般の皆様は常識としてお含み下さい。

昭和二十二年法律第百五十九号
(赤十字の標章及び名称等の使用の制限に関する法律)
(昭和二十二年十二月十日法律第百五十九号)

最終改正:平成一六年六月一八日法律第一一二号

第一条 白地に赤十字、赤新月若しくは赤のライオン及び太陽の標章若しくは赤十字、ジュネーブ十字、赤新月若しくは赤のライオン及び太陽の名称又はこれらに類似する記章若しくは名称はみだりにこれを用いてはならない。

第二条 日本赤十字社は、前条の規定にかかわらず、白地に赤十字の標章及び赤十字の名称を用いることができる。

第三条 傷者又は病者の無料看護に専ら充てられる救護の場所を表示するために、白地に赤十字、赤新月又は赤のライオン及び太陽の標章を用いようとする者は、日本赤十字社の許可を受けてこれを用いることができる。

第四条 第一条の規定に違反した者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

附 則

この法律は、昭和二十三年一月一日から、これを施行する。

附 則(平成一六年六月一八日法律第一一二号)抄

(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

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