14年ぶりにローマ法王がキューバへ


バチカンの国旗。同国の憲法に付図として描かれています。正方形です。

キューバの国旗

ローマ法王(教皇)ベネディクト16世が3月26日、キューバを訪問しました。法王の同国訪問は1998年のヨハネ・パウロ2世以来、14年ぶりのことです。

26日、同国第二の東部の都市サンティアゴ・デ・クーバの空港に着いた法王は「キューバは将来を見据え、改革しようと努力している」と語り、経済改革を進めるラウル・カストロ政権に一定の評価を示しました。翌27日には首都ハバナで、ラウル・カストロ国家評議会議長と会談し、28日には、要職から引退したフィデル・カストロ前国家評議会議長と会談しました。

フィデル・カストロはチェ・ゲバラらとともに1959年に革命を達成して以来、カトリックを厳しく批判し、宗教・政治犯を多数下獄させ、教会外での活動や雑誌の出版が禁じられたこともあるなど、その宗教活動にさまざまな規制を加えました。それでも、カトリック教会は唯一の合法的な批判勢力として存続はしてきました。それが、革命から33年後の1992年の憲法改正でさすがのキューバの社会主義政権も国民の根強いカトリック信仰に抗しきれず「信仰の自由」を盛り込みました。

それでも、まったく不十分だとして共産党独裁という政治体制や人権問題を取り上げて政権に反対する人たちは「法王にキューバの現状を知ってほしい」と訴えました。中でも、25日、ハバナ市内の教会の前で、白い服を着た女性たち約30人が花を手に静かに行進したことは各国からのメディアに注目されました。政治犯の釈放や複数政党制などを求め、「白い女性たち」と呼ばれる反体制派の人たちです。

ラウル・カストロ国家評議会議長は法王を出迎えた際のあいさつで「わずかな人が富を増やし、エゴイズムが横行する(先進国の)現状に、若者らが怒っている」と語り、教会と価値観を共有していると強調しました。その一方で、「我々は国民の意見を聞き、変えるべきところは変えている」「キューバ国民には、深い信念がある」として、社会主義体制を堅持する姿勢を示しました。

近年は政府とカトリック教会の関係は徐々に改善し、新たな神学校の建設が認められたり、信者や教会の求めに対応して、昨年末、宗教・政治犯ら約3千人を恩赦したりしています。また、家の売買や様々な自営業を認めるなどの経済改革を進めてもいます。それでも多くの国民が、まだまだ不十分として、法王にその解決に影響力を発揮してくれることを期待しているのです。

法王は26日夕、東部サンティアゴ・デ・クーバの革命広場で20万人を集めて野外ミサを行い、「許しという武器をもち、より開かれた新しい社会を建設するために闘いますように」と呼びかけました。法王はローマから最初の訪問国メキシコに向う機中で、23日、「マルクス主義がもはや現実に対応していないのは明確だ。新たなモデルを模索するべきだ」とも述べており、体制変革を促した発言として注目されています。

キューバの国旗は革命でも変わりませんでした。停止された憲法でデザインや制定の経緯まで詳しく説明されているのですが、国旗は継続されてきました。アラブ諸国はこうした場合にまず国旗を変更するのが常ですが、ラテン・アメリカでは、めったに国旗の大きな変更はありません。

①かつてブラジルが帝政から連邦共和制に変わったとき(1889年)や、
②最近ベネズエラでチャベス大統領が紋章の一部を変え、星の数を1つ増やした(2006年)ほか、
③1960年代後半にグアテマラの国旗に描かれている国鳥ケツァールが簡略化されたり、
④1990年代にボリビアの国旗に「未回収のリトラル県」を表わすために1つ星が増えたり、
⑤1990年ごろ、パラグアイの国旗の裏の紋章に描かれたライオンの向きが変わったりということはありましたが、
③④⑤は明確な法令もないまま「自然に」変更されたもので、例はありません。

法王の訪問をきっかけにキューバでさらなる民主化が進捗することを祈念します。

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