「チベットには国旗があったし、ある」話

チベットは本来、アジアの1つの独立国です。


1912年、青木文教らによってデザインされ、ダライラマ12世により採択されたチベットの「国旗」
青木の『祕密之國 西藏遊記]』(内外出版、1920年)に事情が記されています。

私の手元に『萬國旗 附軍艦旗・商船旗』という昭和13(1938)年発行の分厚い国旗の本があります。


『萬國旗 附軍艦旗・商船旗』

同 奥付

著者は吉川晴帆。この人がどういう人物かは、私は詳らかではないので、今、美術史の専門家に問い合わせているところです。絵の専門家であったことは確かだからです。

その本に、チベットは「西蔵」として、国旗が掲載されています。現在、中国の武力支配による人権抑圧に「焼身自殺」までして激しく抗議している人たちが掲げているのはまさにこの旗です。

私は中国政府の「人を人と思わない」「国を国と思わない」政策に、断固反対します。旗を研究して60年、東京オリンピック以来、数々の国家的かつ国際的な行事で国旗を担当してきた私としては、北京五輪の成功を祈念し、国旗でトラブルが起きないことを願っていますが、「もし、その成功がチベット、東トルキスタン(新疆ウイグル)などでの中国による武力支配を正当化することに繋がるなら、北京でのオリンピックは開催されるべきではない」と2008年の北京五輪の直前に、私のブログで書きました。


2008年、北京オリンピックを前にした長野での「聖火リレー」。「帰国ビザ」給付の可否までちらつかせて留学生を動員し、長野を中国の「五星紅旗」で埋め尽くした。このときに、日中両国の国旗と五輪旗が掲げられ、自由かつ安全にチベットの旗が掲げられなかったことを、中国のために惜しみます。あれからまもなく4年です。中国の人権問題は改善したのでしょうか。疑問です。

北京五輪聖火の採火式で手錠の形の五輪旗を掲げて中国の人権抑圧に抗議するジャーナリストたち。AFP

『萬國旗 附軍艦旗・商船旗』の中で吉川は、タイ、ビルマ、インド、ネパール、ブータンの次にチベットの国旗を紹介し、この記事の末尾のように述べています。そして、同書は続けてアフガニスタン、イラン、オマーン、クエートの順で各国旗を紹介しているのです。もちろん、この本に出ているから独立国だというほど話は単純ではありません。現に、吉川も序文で「独立国は勿論のことではあるが、半独立国其他でも我国より見て知るを便利と思はれた所は掲げることにした」と断っています。しかし、この並び方をみると、少なくとも当時、中国の支配を受けている地域という扱いではありません。

1951年、「人民解放軍」なる名前とはまるでかけ離れた軍事力による侵略を受け、独立を奪われたチベットの人々に対し、衷心より同情申し上げ、中国政府の人権抑圧に強く抗議する者です。

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(チベットの国旗は)我が国の軍旗よりヒントを得たもので、これにチベットのシンボルであるところの日(月は省略してある)と獅子とヒマラヤ山(雪山)と菊花形、ダイヤモンド、そのの他を取り入れたものである。 元来、仏の予言によって成った国といわれるだけに仏に関する材料が多いわけで、日は世の光、唐獅子は仏の獅子吼を語るもの、菊花はこの国の国花ともいわれるものである。
(現代の表記に置き換えたもの。「わが国」とは日本のこと。)

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