ある晴れた日に

ジャコモ・プッチーニの作曲した4幕オペラ『ラ・ボエーム』(La Bohème)を新国立劇場で鑑賞しました。物語はアンリ・ミュルジェールの原作『ボヘミアン生活の情景』(1849年)に基づくもので、ご存知の通俗的なお話です。


世界的なオペラ・バレエ専用劇場である新国立劇場

「ラ・ボエーム」というのは、「ボヘミアンのように自由奔放な生活をする人」
原意。詩人や絵描きが繰り広げる悲劇。

私は日本ではどうも、オペラをあまり見ないのは、自分が点なの俗人のくせに、この毎度毎度の通俗的かつ単純な物語に辟易するからなのですが、今回は第二幕の主役の一人ともいうべき老人役でいろいろお付き合いのある晴 雅彦さんが出ることから、寒い中を出かけました。

晴さんを少し知る人にはこの「いろいろお付き合いのある」は禁句ですが、私はそういう(ここではいささか書きにくい)お付き合いは全くありません。念のため。

率直に言って晴さん以外のソロ歌手(日本人、韓国人、イタリア人)には必ずしも満足しませんでしたが(晴さん、もう一回書きましょうか?!)、豪華な舞台装置、大勢の出演者、演出の見事さ、そして新国立劇場のすばらしさには感動しました。

特に、新国立劇場の大ホール、実は初めてだったのですが、日本随一のオペラ専用ホールというだけあって、諸外国のものと比べて勝っても劣らない世界最高水準かと思います。

1点だけ、小さなことしょうが、私には大きいことで申し上げます。劇場の通路には衣装や公演の写真も旨く展示されているのですが、その中の1枚、「蝶々夫人」の「ある晴れた日に」の公演写真がおかしいのです。晴さんのことを考えていたら、ぱっと目に入ってしまいました。掲げられているアメリカの「星条旗」がなんと48星になっているのです。

長崎を舞台に、没落藩士令嬢の蝶々さんとアメリカ海軍士官ピンカートンとの恋愛の悲劇を描く。物語は、フィラデルフィアの弁護士ジョン・ルーサー・ロングが1898年に米誌のセンチュリー・マガジン1月号に発表した短編小説(Madame Butterfly)」が原作。これをアメリカの劇作家デーヴィッド・ベラスコが戯曲化し、プッチーニが作曲したものです。初演は、1904年2月17日、ミラノのスカラ座でした。


2004/5年シーズンのプッチーニ「蝶々夫人」(演出:栗山民也)の一場面

他方、「星条旗」は、ユタの州昇格で1896年7月4日から45星に、1908年、オクラホマの州昇格で46星に、そして1912年、ニューメキシコとアリゾナが州になっての48星(いずれも州昇格後、最初の独立記念日=7月4日から星の数が増える)です。


1898年、ユタの州昇格で変わった45星条旗

1906年、オクラホマの州昇格で46星になった星条旗

ニューメキシコ、アリゾナの州昇格による1912年以来の48星条旗。日本との戦争はこの旗の下で戦った

アラスカの州昇格による1959年から1年間だけの49星条旗

ハワイの州昇格による1960年以来の50星星条旗

したがって、どう考えても「蝶々さん」が「ある晴れた日に」見送った船にも迎えた日の船にも48星はありえないのです。

せっかくの出演者と大道具、衣装…豪華絢爛たる公演でしたが、新国立劇場さん、世の中には私のような詰まらないところでひっかかる奴もいるということを、ほんの少しでいいですから、お考えください。

この原稿、晴さんと曲名をかけたわけではありませんので、あしからず。

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