アラブ・イスラムの4色物語①


フサインらが用いた「アラブ反乱旗」

フサインが建国したヒジャーズ王国の国旗。
現在もパレスチナの国旗として受け継がれている。

ヨルダンの国旗

サハラ・アラブ民主共和国(西サハラ)の国旗。
通常、裏面には月と星を描かない。

アラブと聞けば、私の世代では学生時代に見た1962年アカデミー賞受賞映画『アラビアのロレンス』を思い出す人が多いでしょう。ピーター・オトゥール畢生の名演技とそれまでになかった、第一次世界大戦時の中東の分離独立とドイツの勢力を抑えようとするイギリスの、自国の国益しか考えない戦略と戦術の凄まじさを十分味合わせてくれた映画です。

数々の美しい砂漠の映像も印象に残っていますが、なんといっても冒頭でロレンスがバイクで事故死してしまうシーンと、ロレンスの乗った自動車がなにげなくバイクに抜き去られるラストシーンがしさするものを考えさせられました。2つのシーンは、結果的にオスマントルコ帝国からの離反をそそのかすことに努めたロレンスの果たした時代的役割の終わったことを暗示し、また、その帝国崩壊後のアラブ自身の分裂を示唆していたように思います。207分という長編映画ですが、50年経った今、もう一度、鑑賞したい思いです。

ところで、ここは映画の話ではなく、国旗の話です。

アラブの国旗と言えば黒白緑赤の4色です。汎アラブ色または、イスラム・アラブ色と言われ、21世紀の今でも、アラブのイスラム各国の国旗に共通の4色です。アラブ・イスラム諸国の国旗では青、黄色、オレンジといった色は用いられることはまずなく、よほどの例外として、一時期のイラクの国旗(クルド人を表す色として黄色が一部に用いられた)や地域の旗に出てくる程度です。

なぜこの4色なのかということを当時から調べていました。しかし、結論から言うと、諸説あって依然はっきりしていないのです。

1909年にオスマン帝国の首都イスタンブルにいたアラブ人民族主義者の団体「文学クラブ」(アラブ知識人委員会)が、13世紀のアラブの詩人サフィアル・ディナ・ヒーリー(Safi a-Din al-Hili)の詩に基づいて赤・白・黒・緑の色を選んだというのは有力な説です。しかし、1911年にパリ留学していたアラブ人の学生らによる「青年アラブ協会」(アル=ファタート、 Young Arab Society)が最初に使ったという話もあります。さらには、イギリスのマーク・サイクス卿(「サイクス・ピコ協定を締結した外交官)がデザインしたという説さえあります。

しかし、いずれにもせよ、フサイン・イブン・アリーがここで決定的な役割を果たしたのは事実です。広範な青年たちの支持と推戴によりメッカ(マッカ)のシャリーフ(太守)となり、第一次世界大戦時に、ドイツに組みしたオスマントルコ帝国に対し「アラブ反乱を指揮した人です。大戦後はヒジャーズ王国の国王にもなりました。そのフサインが1917年にこの旗を掲げてオスマントルコ帝国に刃向かったことにより、広く、そしてその後100経った今でも、アラブ民族主義の旗として認知されるようになったことは確かです。

そしてそのデザインをべースにしてヨルダンや王政時代のイラクの国旗が出来、今ではそのままパレスチナの国旗となり、さらにはそこに三日月と星を付けて、西サハラの国旗となっています。

イスラエルの建国に抵抗したパレスチナのアラブ人たちは、1948年10月18日、往年の「アラブ反乱」の旗そのものを、パレスチナの旗として定め、アラブ連盟もこれを承認しました。その後、1964年にパレスチナ解放機構(PLO)が「アラブ反乱旗の色の順序を変えたヒジャーズ王国の国旗を、パレスチナの旗として採択しました。さらに1988年11月15日、PLOはこの旗をパレスチナの国旗として採用したのです。

そうした研究をしているさなか、数年前に出会ったのが次の詩です。アラブ知識人委員会の会議が汎アラブ色として選んだとされる、前述のサフィアル・ディナ・ヒーリーの詩です。

Ask the high rising spears, of our aspirations
Bring witness the swords, did we lose hope
We are a band, honor halts our souls
Of beginning with harm, those who won’t harm us
White are our deeds, black are our battles,
Green are our fields, red are our swords.

ところが、遺憾ながら、私の乏しい英語力と詩心では到底、訳すことはできなく、思い切って、長年、津田塾で英語を指導しておられた小林依子先生にご相談したところ、先生はネイティブの専門家を含む内外の友人に檄を飛ばして、最終的に、種田公二さまから、次の翻訳文をお送りいただきました。

高く掲げた槍に問いかけよ
我々の勇猛心の高さを!
剣を持ち寄って証人として語らせよ、
我々が勝利への望みを失ったか否かを!
我等は一心同体、我等の誇り*¹は 
我々に害を加えようとしない者たちには
こちらから先、危害を加えること勿れと教えている*²
白は我等の盟約のシンボル、黒は我等の戦い、
緑は我等の戦場、赤は我等の剣

種田様からの注:
*¹:「武士道」といった感じ?
*²:これだけは誓い合って守ろうという意味か

感謝の申し上げようもございません。

長くなりそうです。まずは、アラブ・イスラムの4色物語の一回目はここまでにしましょう。

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