国連旗物語②


国連旗

「敵国条項があるから国連旗には日本は描かれていない?」ということをおっしゃる先生がおられるそうです。都下の都立高校の公民の教師だそうですが、タディは思わず、「ええっ!」と声を発してしまいました。

「敵国条項」については少し説明がいるかもしれません。

「敵国条項」は国連憲章第53条(決議の例外)と第107条(連合国の敵国に対する加盟国の武力制裁)に出てきます。<第二次世界大戦中に「連合国の敵国」だった国が国連憲章に違反する行動を起こした場合、国連加盟国は国連決議に関係なく、単独でも、無条件に、その国に対して軍事的制裁を課すことが容認され、この行為は制止出来ない>というものです。

また、第53条第2項では「本項で用いる敵国という語は、第二次世界大戦中にこの憲章のいずれかの署名国の敵国であった国に適用される」となっていますが、それが具体的にどの国を指しているかは明記されていません。ただし、日本政府の見解や国際法の専門家たちの通説では、第2次世界大戦で連合国と戦火を交えたことのあるドイツ、イタリア、ブルガリア、ハンガリー、ルーマニア、フィンランド、日本がこれに該当するという解釈です。つまり、これらの国々(及びその継承国)は米ソ英仏中(及びその継承国)を含む、国連憲章原署名51カ国の敵国であったことのある国とされています。

もう少し詳しく見てみましょう。

このうち、イタリア、ブルガリア、ルーマニア、フィンランドは、終戦の前年である1944年に日本とドイツに対して宣戦布告をしていますが、敵国条項を適用される国とみなされています。

近年、日独伊の3国は共に敵国条項の削除の協議を行っていますが、実際にはこの敵国条項は名存実亡、国連憲章の中の死文化していると見てよいかと思います。

なお、タイは、日泰攻守同盟条約により枢軸国側に立っていましたが、終戦直後から、これは日本の軍事力により強要されたものであると主張し、連合国により、敵国とみなされず、また敗戦国の扱いもされませんでした。このためタイは国連発足直後、国連に加盟したのでした。

このようにどの国を敵国条項適用国にするかはかなり微妙です。私に言わせれば、ノルウェーに侵攻したドイツ軍がソ連に戦いを挑んだフィンランド軍救援のためスウエーデンを通過したことは、スウエーデンの中立義務違反であり、スウエーデンは完全な「シロ」ではないのではないでしょうか。

それはともかく、敵国条項は確かに国連憲章に存在しているままであることから法的には未だ有効であるという意見もあります。そこで1995年の国連総会で、日独両国が中心になり、第53条と第107条を憲章から削除する決議案を提出し、これは、北朝鮮、キューバ、リビアの参加国が棄権しただけで賛成155カ国の多数によって採択されました。

しかし、国連憲章の改正には総会の構成国の3分の2の多数と安全保障理事会のすべての常任理事国を含む全加盟国の3分の2によって批准されることが必要(憲章108条)であり、各国の国内事情やさまざまな都合もあって、未だ批准は進んでいません。タディはこれが依然、憲章に残っていることは、国連の重大な欠陥であるとさえ思います。

そこで、最初の「ええっ!」に戻ります。

念のため、明石康さん(日本人最初の国連職員として1950年代から勤務し、国連事務次長などを経験)にお目にかかり、問い合わせました。秋田県立秋田高校の10年先輩であり、長らくご指導をいただいてきた関係ですので、即座に教えてくださいました。

「冗談じゃないよ。敵国条項は死文化しているし、そんなことから旧敵国を国連旗から削除なんかしてごらん。ヨーロッパは地図の体をなさなくなってしまうじゃないか。日本が海だけになってしまうという地図だってあり得ないじゃないか」。

あやうく、「キミも少しは常識を持ちたまえ」と言われそうだったので、その話は早々に切り上げました。

メニュー