三色旗は三等分か物語


B.フランス海上用国旗

フランスの国旗は世界で最も人気のある国旗だと書きましたが、それについては単にデザインというだけではなく、その国へのトータルな評価や敬意があるからにほかなりません。もちろん、フランス国民の大部分はこの旗をデザイン的にも最高にすばらしいものとして誇っています。

ただ、三色の幅については常に意見がありました。議論は今でも続いているのです。というのは、遠くから見て、「等分」では竿側が太く見えておかしい、つまり、竿に近い青の部分では旗布がピンと張って、端の赤よりも大きく見える、というのです。
また、白が膨張色で青よりも大きく見えてしまうとか、いろいろな意見があったようです。

このため「三色旗」の竿側の帯(青)の幅を狭くするということが行われました。この不等分な帯の「三色旗」(図B)は1853年5月7日にナポレオン三世によって海上旗として制定されたものが始まりですが、特に第三共和制(国)の時代(1875~1945)には三色が30:33:37の幅に区分されたものが国旗としても使われていました。

わが国の国旗に関する刊行物でも、1938(昭和13)年刊行の吉川晴帆の名著『萬國旗』でも「フランス国旗の三色は30:33:37の横幅である」としています。

また、青の色についても濃かったり、明るかったりいろいろで、何事によらず個性尊重のフランス人らしい用い方でしたし、それは今でもあまり変わっていないようです。しかし、これでは国旗のデザインが混乱するということで、第二次大戦後、臨時政府を率いていたド・ゴールが中心になって最初に定めた「第四共和国憲法」の冒頭(第二条①)で「フランス共和国の国旗は縦に三等分された青白赤のトリコロールである」とし、「三等分」を明記しました。

ところが、それで一件落着と思いきや、未だ最終的にまとまったとは言えないようです。

アルジェリア問題への対応で苦慮し、混乱していたフランスの政局をまとめるため、58年、同じド・ゴールが復活して大統領の強権を手中にし、フランスは「第五共和国憲法」の時代になりました。その憲法(第二条②)で、「三等分」の語を削除し、「国家の標章は、青白赤の三色旗である」とだけになってしまい、現在に至っているからです。

フランスでは今でも商船旗は「30:33:37」であり、国旗はほとんどが三等分のものが掲げられています。

フランス憲法については、大石義雄編『新訂世界各国の憲法典』を参照しました。

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