「辰、竜、聖ジョージ」物語①

辰年の正月が終わりました。
辰(龍、竜)といえばブータンの国旗の大きな竜を思い出しますが、今回は年頭にあたり、少し話を絞って、東西の竜について考えてみたいと思います。


マルタの国旗

グルジアの国旗

イングランドの旗。
国旗「ユニオンジャック」はこれとスコットランドの青地に白の斜め十字の旗が17世紀のはじめに合体したのが始まりです。

モスクワの市旗

ラファエロの「竜を退治するゲオルギス」

グルジアの国章には守護聖人・聖ジョージ(ゲオルギオス)がドラゴン(竜)を退治している様子が出てくるということは先日書きました。それと同じ情景がマルタの国旗にも、モスクワの市の旗や市章にも出てくるのです。

加藤清正の虎退治は日本だけの言い伝えですが、ゲオルギスのドラゴン退治は、ワールドワイドといってもいいようです。
聖ジョージはイングランドやグルジア、そしてモスクワの守護聖人です。また、イングランドの旗である白地に赤い十字は「聖ジョージの十字」といわれ、全く同じものがグルジアの国旗も出てくるのです。

「聖ジョージ」、その伝説上の生誕地はグルジアのカッパドキアとされています(一説にはリュッダ)。伝説そのものも11世紀から12世紀頃のグルジアが発祥の地。

旗にも古い歴史があり、13世紀にバグラティオニ朝グルジア王国の旗として使用されたとか、14世紀にモンゴルの支配を脱しようとギロルギ(ゲオルグ)5世(光輝王)がこの旗を掲げて奮闘したという言い伝えがあります。

ゲオルギオスは13世紀にはイングランドの守護聖人とされています。

以下にまずその伝説を、ウィキペディアによってですが、ご紹介しましょう。

カッパドキアのセルビオス(Selbios)王の首府ラシア(Lasia)付近に、毒気は振りまく、人には咬み付く、という巨大な悪竜がいた。

人々は、毎日2匹ずつの羊を生け贄にすることで、何とかその災厄から逃れることとなったのだが、それが通用するのはそんなに長い時間のことではなかった。羊を全て捧げてしまった人々は、とうとう、人間を生け贄として差し出すこととなった。

そのくじに当たったのは、偶然にも王様の娘であった。

王は城中の宝石を差し出すことで逃れようとしたが、もちろんそんなものでごまかせるはずはなかった。そのかわりに8日間の猶予を得た。

そこにゲオルギオスが通りかかった。彼は毒竜の話を聞き「よし、私が助けてあげましょう」と出掛けていった。ゲオルギオスは生贄の行列の先にたち、竜に対峙した。

竜は毒の息を吐いてゲオルギオスを殺そうとしたが開いた口に槍を刺されて倒れた。

ゲオルギオスは姫の帯を借り、それを竜の首に付けて犬か馬のように村まで連れてきてしまった。大騒ぎになったところで、ゲオルギオスは言い放った。

「キリスト教徒になると約束しなさい。そうしたら、この竜を殺してあげましょう」。
こうして、異教の村はキリスト教の教えを受け入れた。

ゲオルギオスはキリスト教を嫌う異教徒の王に捕らえられ、鞭打ち・刃のついた車輪での磔、煮えたぎった鉛での釜茹でなどの拷問を受けるが、神の加護によって無事であった。
王は異教の神殿でゲオルギオスに棄教を迫るが、ゲオルギオスの祈りによって神殿は倒壊する。しかも、王妃までもがゲオルギオスの信念に打たれキリスト教に改宗しようとしたため、自尊心を傷つけられた王は怒りに駆られた。

王妃は夫であった王の命令によりゲオルギオスの目の前で見せしめとして惨殺されるが、死の間際「私は洗礼を受けておりません」と訴えた。

ゲオルギオスが王妃の信仰の厚さを祝福し「妹よ、貴方が今流すその血が洗礼となるのです」と答えると、天国を約束された王妃は満足げに息を引き取ったと言う。ゲオルギオス本人も斬首され、殉教者となった。

この伝説がイングランドにもたらされ、メロヴィング朝の祖は聖ジョージであるというまでになりました。そしてガーター勲章や金貨にゲオルギオス(聖ジョージ)が白馬に跨り龍を倒す様子が登場するようになったのです。

マルタは地中海の真ん中にある戦略上の要衝。第2次世界大戦時にイタリア軍の猛攻を耐え抜いたことからそのガーター勲章を授与され、その勲章を国旗に描いています。モスクワの市旗や市章も同様です。
話を辰年に戻しましょう。
辰、すなわち龍は想像上の動物です。同様に、鳳も鵬も、そうですね。

「広辞苑」によると鳳は「想像上の瑞鳥」ということですが、鵬は、荘子の「逍遥遊」に出てくる想像上の大鳥のことです。これは、鯤(こん)という魚が化したもので、翼の長さ3千里、9万里の高さまで飛ぶとされる、とその本には書いてあります。

キリンは1日に千里も走る駿馬、竜は、インド神話で、蛇を神格化した人面蛇身の半神。
大海や地底に住み、雲雨を自在に支配する力をもつとされています。

中国では、神霊視される鱗虫の長。鳳、麟、亀とともに四瑞の一つとされ、『竹取物語』に「はやても竜の吹くかする也」とあるそうです。

竜眼,龍駕など天子に関わるものをいいます。そういえば、城山三郎の代表作の1つ「男子の本懐」には安達内相の日記を引用して、「竜顔」とあるのを思い出しました。昭和天皇に、東京駅で浜口首相が撃たれたと報告したときの陛下のお顔をさす言葉として、です。

ところで、大相撲初場所をテレビ観戦していて、力士のしこ名にはこの鳳、麟、鵬がずいぶんいるし、昔もいたな、と思った。調べてみると江戸時代末期の第10代横綱は雲龍、大正初めの横綱は鳳、そして最近まで大活躍し、なにかと波紋を描いた第68代横綱・朝青龍。初場所の番付を見ても、白鵬(横綱)をはじめ、鶴竜(関脇)、妙義龍(東5枚目)、旭天鵬(西6)、天鎧鵬(西13)、朝赤龍(東15)、旭秀鵬(西15)と並んでいます。

初場所10日目、これまで20回対戦し一度も勝ったことのない鶴竜が掴んだまわしを握り締め、横綱・白鳳を堂々と寄り切って勝ちました。もしかしたら、「竜は鵬」より強いのかも。来場所も頑張って大関になってほしいものです。

それにしても昨年は、プロ野球セリーグでは中日ドラゴンズがまたまた覇者となりました。アンチ巨人の私として、また、落合監督の同郷(秋田)人としてはこれは大いに喜ぶべきことかもしれませんが、ジャイアンツが弱すぎてはつまらないのです。

国旗と大相撲や野球、およそ関係はなさそうですが、洋の東西、時代の古今を問わず、人間には想像上の動物の力が必要なのだと正月の明けたこの週末に思い至りました。

「辰、竜、聖ジョージ」物語②
「辰、竜、聖ジョージ」物語③
「辰、竜、聖ジョージ」物語④

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