H.ルソーの絵、フランス三色旗に注目を

アンリ・ルソー(1844~1910)が1896年から98年にかけて描いた「エッフェル塔とトロカデロ宮殿の眺望」(ポーラ美術館収蔵)です。箱根に行ったら必ずと言っていいほど行くのがここと成川美術館。先日も北九州市からの江崎穣ご夫妻らと出かけた。

ご注目戴きたいのはエッフェル塔の頂の「トリコロール」。絵とはいえ、三色が3等分でないところで私の眼が停まった。第3共和政時代(1875~1945)の「トリコロール」は三色の幅が30:33:37が普通だった。掲揚された時、そのほうが三等分に見えるというのだ。いまでも、その比率はフランスの、軍艦や商船など海上で用いる国旗に引き継がれている。

1946年の第4共和国憲法ではその第2条で「フランス共和国の国旗は青白赤の3等分のものとする」とされたのだが、1958年の第5共和政憲法(「ドゴール憲法」)ではその条文から「等分」の語が消えた。

フランス人の美学をしる思いがする。ところで、旗竿側に寄せたデザインは北朝鮮国旗の赤い星、パラオの黄色い太陽、バングラデシュの赤い太陽などあり、いずれもそのほうが実際に掲揚された時に星や太陽や月が真ん中に見えるという理屈だ。

そして、何を隠そう、1870(明治3)年1月27「日の丸」太政官布告第57号で「商船に掲ぐべき御国旗」を定めた時、「日の丸」の円は横の100分の1だけ、旗竿側にずらしたのであった。

わずか11カ月前までは箱館で戦争をし、その時は、幕府(榎本武揚)側が「日の丸」、「官軍」側は旭日旗だったことを思えば、この100分の1云々は、明治の諸先輩が考えてデザインしたものとは到底、思えない。

おそらくはフランス人のお雇い外国人の世話になったのではないか。拙著『知っておきたい「日の丸」の話』(学研新書)では「もしかしたらモンブラン伯爵の指導によるものではなかったか」と踏み込んでみたが、いかんせん、当時の公文書館は西南戦争の直前に焼失して、「何も残っていない」(国立公文書館)。

なにか手がかりはないものかと、来年は是非、追求してみたい。

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