朝日新聞での吹浦へのインタビュー②


東京オリンピック開会式当日の吹浦。
国立競技場式典本部前で。

―2020年に向けて、いま何が必要でしょうか。

「これまでのところ、組織委は、大会の指針となる哲学を発信していません。どんな五輪を目指すのか、さっぱりわかりません。理想の看板がない。五輪には多くの人々を燃えさせるコンセプトが必要です」

―具体的にいうと?

「ロンドン五輪は『節約』というコンセプトを打ち出しました。新たな施設は造らず、環境に配慮し、国旗も布製のものを減らして映像を使う方法をとりました。成熟国として明確なメッセージがありました。北京五輪はこれでもかというほど『偉大なる中国』を演出し、ロシアのソチ五輪はプーチン大統領の支持率を高めるための五輪だったと言っていいでしょう。東京ではもう『国威発揚』はいりません」

「組織委の役員がリーダーとなってコンセプトを発信すべきですが、顔ぶれは元官僚のほか、財界や関連団体要人の兼任者とスポーツ選手がほとんどで、優秀なプランナーと思われる人、積極的に夢を語る人、戦略家はおよそ見あたらない、と言ったら失礼でしょうか。このままだと、単に派手なだけの国際運動会で終わってしまうのではないか、と危惧しています」

「64年五輪の組織委を知る人間ということで、多くの方が私を訪ねてきます。東京都庁にある組織委事務局には都から多くの職員が駆り出され、中央官庁からも期限付きの手伝いが来ていますが、『6年もこのポストにいれば出身の役所に戻ってもイスがない』という人さえいます。どうも腰が定まらない様子です」

「あいさつ回り、新聞の切り抜き、どれだけ金が集まるかという資金の見通しと当面の予算作成、手狭になった事務局の引っ越し先の検討などに忙殺され、コンセプト作りなどあとは大手広告会社頼み、という声も聞きます。組織委には徹底的に議論し、どんな五輪にしたいのかという理念、方針を示していただきたい。理念までも、利潤を目的とする広告会社に発注するような組織委では、どうしようもありません」

「全国、いえ広く世界から知恵を集めよ、と言いたいですね。業者の売り込みではなく、私利私欲のない、世界を感動させるような知恵やアイデアを集めるべきです。新国立競技場建設が現行の案でいいかどうかは別として、外国人の建築デザイナーの作品に決まったことは世界と交わる東京五輪にふさわしいのではないでしょうか。この方式を他の分野でもやってほしい。メディアに手伝ってもらってもいい。それを、技術者やトータル・プランナー、デザイナーなどとともに専門家が全体構想の中で整理し、採否を決めて、計画全体を構成すべきだと思います」

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