2020 TOKYO 世界からの知恵と人を集めよ

オリンピズムの目標はスポーツを通じて人類の調和のとれた発達に役立てること、人類の尊厳保持と、平和な社会の実現を目指していくことであるのは周知のことである。


オリンピックシンボル

招致決定から丸一年、次の東京オリンピックを通じ、日本と日本人がスポーツのみならず、教育、芸術、文化など多方面での一層の振興とイノベーションを図ることを期待している。それができてこそはじめて「成功」であり、招致してよかったというべきであろう。 

しかるに、私は前の東京や長野のオリンピック組織委にかかわった「先輩」として、さまざまな関係者と何度もお会いしているが、これまでのところ、組織委からは指針となるべき哲学や具体的計画が発せられてこないことが残念でならない。

本来はリーダーたるべき組織委の役員が率先して発信すべきだが、優秀な数人のお役人出身者のほかは、あて職とスポーツ選手がほとんどで、優れたプランナーと思われる人、積極的に夢を語る人、戦略家はおよそ見当たらないといっては失礼か。

現状は、都庁の2フロアーを占める事務局には、東京都から大部分の職員を駆りだし、中央官庁から期限付きのお手伝いがやってきている。中には「オリンピックまで6年間もこのポストにいれば出身の役所に戻っても椅子がない」という人まで。招致決定から1年、猪瀬前知事の一件で予定通りとはいかなかったにもせよ、「挨拶まわり、新聞の切り抜き、組織づくり、人集め、資金の見通しと当面の予算作成、事務局の引っ越し場所の検討に忙殺され、あとは広告会社への丸投げの毎日」という声も聴く。

そこでまず、全国からどころか広く世界から知恵を集めよと提案したい。業者の売り込みではなく、私利私欲のない、実現すれば、世界を感動させるような知恵とアイディアを、である。新国立競技場がそのままでいいかどうかは別として、イラク出身の建築デザイナーの作品に決まったことは世界と交わる2020年の東京オリンピックにふさわしい。この方式を他の分野でもぜひ、やってほしい。

組織委にそれができなければ、新聞社や広告会社に手伝ってもらってもいい。それを専門家が技術者やトータル・プランナーやデザイナーなどとともに全体構想の中で整理し、採否を決めて、全体計画を構成する。

例えば、私はこんな知恵を出したい。

1. オリンピアで採火された聖火はどうやって日本に運ぶかは未定。しかし、私は是非、地上を走破して、国境線上で隣国のランナーに火を受け渡す方式でユーラシア大陸を走破してほしいと願う。

これは1940年の「幻の東京大会」の夢であったし、1964年の東京大会にあたっては組織委、朝日新聞、日産自動車の合同チームでギリシャからインドまで調査隊が自動車で走破するなどしたのだった。その後、各国に日本大使館など公館が設置され、国際協力の要員や企業の駐在員など在留日本人の数も格段に増えた。また、アジア・ハイウェイが整備されたのをはじめ、GPSなど通信事情が大きく改善され、車両もはるかに質の高いものになった。シリア、イラク、パレスチナ、ウクライナなどなど、さまざまな紛争や戦乱もあるが、古代オリンピックのように停戦を働きかけるなど、やる気があれば、1940年と64年で果たせなかった壮大な夢も三度目の正直、努力と工夫と忍耐で何とか克服できるのではないか。

しかし、北京大会での聖火リレーが「身から出た錆」とはいえ採火時トラブル以来、苦労したことを受け、2009年3月26日、IOCは今後、世界規模の聖火リレーを廃止することを決定、聖火リレーは主催国内のみで行うことにした。ここは日本側がその決定を撤回するよう働き掛け、説得して、世界中の人々と夢を共有したいものだ。五輪は単なる運動会やスポーツ大会とは違い、平和を祈る由緒ある祭事に由来するからだ。

2. 前回もそうだったが、開会式のファンファーレは曲を募集し、当選作を2020人の自主的に、持参のトランペットで参加し演奏するというのはどうだろうか。2010年、サントリーホールでクラシックトランペットの巨匠エリックーオービエ(フランス)を中心に236人のトランペット奏者の協力で演奏会を行った。先月は、その一人・杉木峯夫東京芸大名誉教授が同数以上の演奏者を集め、札幌の大通公園で演奏したと聞く。開会式の前日にでも、一度リハーサルを行い、年齢、男女、国籍の別なく、これだけの人のファンファーレで大会を始めてはどうか。

3. 閉会式は選手役員、観衆が一体となり、選手の健闘をたたえ、4年後に繋ぐ重要な祝典である。ここはアリーナでさまざまな舞踊を行うことを提唱したい。あるところではソーシャルダンスやフォークダンス、他の場所では阿波踊り、八木節でいい。最後はきっとみんなが一緒になるに違いない。スポーツ、音楽、踊りに国境はない。

ほかにも、施設の建設を急ぎ、開会前に広く一般に公開し見学会を行うことなども、是非、やってほしい。1964東京では施設が開会直前に出来上がり、組織委で働いていた職員があっちでウロウロ、こっちでキョロキョロ。今度は国民全体の競技施設として早々に竣工・改築・改装し、公開してもらいたいものだ。

日本が誇る最新技術の披歴も大事だが、こうしたアナログではあってもロマンと人間のあたたかさが伝わる東京オリンピックにしてほしいものだ。

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