89歳の独裁者も来日② – TICAD5 横浜で

ムガベ大統領のジンバブエがアフリカの健全な国造りの見本になるのではないかとの期待は1980年代には特に強かった。

このため日本のメディアでも毎日新聞は首都ハラーレ(旧ソールズベリ)にサハラ以南唯一の支局を構え、石郷岡 健 前モスクワ特派員を派遣するほどだった。ちなみに他社はナイロビ(ケニア)に支局を開設していた。今は読売と毎日が南アのヨハネスブルクに支局を置く。朝日と共同はナイロビに、NHKと時事通信はカイロ以外にアフリカに支局はない。


1980年から現在に至るジンバブエの国旗。
ムガベ独裁政権後は?赤い星の上のしるしは、世界遺産ジンバブエの古代遺跡にある「ジンバブエの鳥」。

ロバート・ムガベ大統領(1991年撮影)

しかし、2000年代に入るとムガベ大統領は白人に対する不寛容な政策に転じた。白人農場の強制収用は国の産業体制の根幹を覆すもので、外資は逃げ、インフレ率は16万5000%、失業率は80%という数字が示すように、経済が崩壊し、天文学的なインフレが起こり、貧富の差が巨大なものになった。

加えて、犯罪の増加やコレラ、エイズの蔓延なども重なり社会不安が広がった。このインフレはその後収束していない。このためムガベ政権は批判勢力に強権的な手法で対応し、国内は極めて混乱した状態が続いている。

これを深刻にとらえたオーストラリアのハワード首相が、英連邦加盟国の地位を1年間停止することを提案、ジンバブエは2003年12月7日、ジンバブエは英連邦を正式に脱退する。しかし、ムガベ大統領はさらに強硬手段を採り、2005年8月には、憲法を改正、白人農場の強制収用明記や、一時廃止していた上院(定数:93、民選議席:60、任命議席:33)を強引に復活させる。同年11月の選挙で圧勝し支配体制を強化した。

2008年3月29日には大統領と議会議員選挙が行われ、実際にはモーガン・ツァンギライ率いる野党勢力に敗北したと見られているが、長期にわたって選挙結果を公表せず、批判勢力に徹底した弾圧を加えており、国内外から強い批判を受けている。

ムガベ候補に対立して立候補を目指していたモーガン・ツァンギライが政権側からの弾圧を理由に選挙戦からの撤退を決めたことから、同年6月27日に行われる決選投票での不戦勝が確定した。2007年9月に改正された憲法で、大統領の任期は6年から5年に短縮されているので、ムガベ氏は今月いっぱいはその地位にとどまることになる。

2009年1月26~27日に南アフリカにおいて南部アフリカ開発共同体緊急首脳会議が開催され、ツァンギライを首相に任命するよう勧告が行われた。ムガベ大統領はこの勧告を受け入れ、一応、オール・ジンバブエ的大連合政府が成立した。こうした動きもあり、一説には、ムガベ大統領自身は退任を模索したこともあったが、軍部や治安機関に押し立てられ政権に固執しているともいわれている。しかし、現実にその独裁的な政権運営が続いており、英国もナイトの称号を剥奪するなど、さまざまな圧力を加えている。ちなみに、ナイトの称号が剥奪されたのはルーマニアの独裁者ニコラエ・チャウシェスクと2人だけ。

本年3月に国民投票によって新憲法が承認され、7月31日に選挙を実施するとの発表が行われた。これには、ツァンギライ首相が「公正な選挙に向けた改革が進んでいない」と、選挙の早期実施に強く反対している(プレトリア発 共同)

ムガベ大統領は、同じ黒人であってもジンバブエを「圧制国家」と非難したアメリカ合衆国国務長官コンドリーザ・ライスに対して、「あのアンクル・トムの娘は、白人が黒人の真の友にはなり得ないと知るべきだ」「彼女は白人のご主人さまの声を反復しなければならない奴隷」「黒人奴隷の先祖を持つあの少女は、奴隷の歴史や、米国内で今、黒人が置かれている状況を知るべきだ。あの白人(ブッシュ大統領)は(黒人の)友達ではない」「(自分は)RICE(ライス)をLICE(シラミや寄生虫)と呼ぶのをようやく自制した」などと酷評している。

このRICEとLICEの話では、ペギー葉山さんが若いころハワイで歌っていて、RとLの発音の区別がうまくゆかず、聴衆の苦笑を買ったというのを、往年の受験本で読んだことがある。ムガベ大統領の圧政から、とんだ話に飛んでしまった。

話を戻すと、そのジンバブエの国旗、もし、ムガベ政権が倒れたら、新政権は内外で国イメージを変えるため、変更になる可能性が結構あるのではないかと思われる。典型的なのはルワンダ。ツチとフツの両部族の血で血を洗う抗争のイメージを変えるため、赤を国旗から省く新鮮な国旗に変更した例がすぐ近くにある。


2001年に国イメージを一新するために変更されたルワンダの国旗。

1962年以来40年近く続いたルワンダの国旗。
Rは国名、共和国、革命、国民投票などに共通なフランス語の頭文字を採った。
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