この旗がどこまで広がるか – イラク情勢②

イスラム過激派組織「アルカイダ」の流れをくむ「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」が、6月末までにイラク北部の第2の都市モスルやさらに南のティクリートを制圧した。


イラク・シリア・イスラム国(ISIS)が掲げるジハード(聖戦)を表す黒旗

これまでイラク国内でISISの支配地域が明確な形で出てきたことはなかったことを思えば、ISISのモスルからティクリートの制圧は新しい事態である。避難民が南北に大勢移動しているさなかに、「イスラム国」の武装勢力は、政府軍の捕虜200人以上を見せしめに殺害した。

この勢力がさらに南下し、ニナワ州(州都モスル)、サラフディン州(州都ティクリート)、アンバル州(州都ラマディ)というスンニ派住民が多数を占める各州でISISの旗を掲げるのはそう遠くなさそうだ。

スンニ派とシーア派の双方が住む首都バグダッドのスンニ派地域にもISISが入る可能性も高い。そうなればバグダッド市内で両派が分裂し、武力衝突する構図になりかねない。

このまま行くと、イラク全体では、単純化していえば、中部のスンニ派地域ではISISが勢力を広げ、バグダッド以南のシーア派地域、北部のクルド地域という3つの国に分裂する構図になる。

この勢力の旗には多少デザインの異なるものがあるが、上部に黒字に白でアラニア語で「ライルウッラー・ムハンマドゥルラシルウッラー(アッラーのほかに神はなくムハンマドはアッラーの預言者なり)、下部の白い円の中には、「アッラー、預言者ムハンマド」(外務省中東2課イラク担当官)、「アッラ-は偉大なり、イスラム法を支え守る、ムハンマド」(東京財団佐々木良昭上級研究員)などと書いてあるようだ。

ISISのスポークスマン、アドナン師の6月29日の声明によると、ISIS最高指導者のアブバクル・バグダディ師をイスラム教開祖ムハンマドの後継者を意味する「カリフ」に任命し、「世界中のイスラム教徒」に対し、バグダディ師をカリフとして認め、忠誠を誓うよう求めている。アメリカ政府は、バグダディ師をテロの容疑者と断定し、その拘束につながる情報提供に対して、約10億2000万円の懸賞金をかけている。しかし、情報は乏しく、プロフィールもほとんど明かされていない。1971年、イラクのサマラ出身。バグダッド大学でイスラム学を学び、学位を取得。2010年にアルカイダ系組織「イラク・イスラム国」のトップに就任、イスラム国家の樹立を唱えているという。かつてのオサマ・ビン・ラディンと同様である。

「イスラム国」は「カリフ制」のイスラム国家を建国する発表をしたことは、同じスンニ派が多いアラブ諸国の反発をも招いている。民主主義と自由主義を否定し、ジハード(聖戦)の旗を振る。そして実力をもって、首都バグダッドに迫りその北東60キロのディヤラ州に進出している。

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