国旗の真ん中に樹木というと?

南太平洋のノーフォーク島の旗についていろいろ書きましたが、国旗の真ん中に樹木、というとレバノン杉を描いたあのレバノンの国旗を思い起こすほかありません。松のノーフォークと杉のレバノン、一緒に覚えましょう。


レバノンの国旗

ノーフォークの旗

レバノンの国旗は憲法できちんと決められているのです。ところが、同国の憲法では「茶色の幹に緑の枝葉」となっているのですが、「1990年代になんとなく全部緑になった」(同国駐日大使館)というのです。当時、10年余り、永田町の同じ小さなビルで働いていましたので、歴代の大使や参事官たちとはすっかり仲良くなり、この全部緑の杉になったのは、いつ、どうしてと何度か迫りましたが、両腕を広げてクビを傾げるばかり。

ウィキペディアにはこんな図が出ていますが、緑をこげ茶で縁取りはしていませんでした。憲法で「幹の上下は赤い帯に接する」とありますから、これはきちんと守られているのですが、どうにもこの変更の法的根拠には納得が行きません。

でも、まあ、グアテマラの60年代の末から国鳥ケツァールが簡略化されましたし、パラグアイも今回ではなく以前、「知らないうちに変わってました」と大使館員がいうような小さな変更がありました。あまりうるさく考えないほうがいいのかも知れません。

レバノンという国名は「白い山」の意。『旧約聖書』にもあるように、雪がヘルモン山を覆っており、また、国土には石灰岩が多いため、実際に白っぽく見えることもこの名のいわれに関係しているようです。

国旗の白はその白亜の国と平和を、赤は国のための献身と犠牲を表わしています。中央のレバノン杉は、聖書では「香柏」と訳されたりします。ソロモンはこの木で神殿を造り、フェニキア人はこれで船を造り、今のチュニジア地方にあたるカルタゴに海洋植民地を築き、さらには地中海沿岸に勢力を伸ばしていました。

しかし、多年にわたる乱伐に加え、近親交配とマツクイムシに似た虫の被害で、滅亡寸前となりました。これを救ったのは国際日本文化研究センターの安田喜憲(よしのり)教授(現・東北大学教授)を中心とする日本の協力。レバノン杉は今ようやく回復に向かっています。

現存するレバノン杉の古いものは樹齢6000年、大きいものは直径4m、高さ30mに達するそうです。

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