国旗に描かれている植物

昨年8月に久しぶりに北イタリアを訪ねた。そこで見た樹木といえば、糸杉、オリーブ、月桂樹に尽きるといってもいいほどこの3つが競っている。

特に、今回、宿泊する機会のあったアーゾロ郊外の丘にあるヴィッラ・チプリアーニ(ホテル)はこの3つに囲まれたなかなか瀟洒な、お勧めの滞在場所であった。隣接する教会で日本人ヴァイオリン留学生たちの発表演奏会があり、若い人たちが夏休みにこういう場所に勉強に来ている様子がよく解った。


北イタリアのアーゾロの丘にあるヴィッラ・チプリアーニ(ホテル)から眺めると、糸杉とオリーブと月桂樹でいっぱいなのがよく見える。

同ホテルの絵葉書にも糸杉が

国旗でこれを見比べると…残念ながら、私の一番好きな糸杉はどの国旗にも登場しない。赤十字の創立者であり、ジュネーブ条約の推進者Sとして第一回ノーベル平和賞を受賞したアンリ・デュナン(1828~1910)の『Un Souvenir de Solferino』には戦場のあちらこちら糸杉が立ち並んでいたことを描いている。この本、1894(明治27)年に駐仏武官経験者であった寺家村和介によって『朔仏里諾之紀念』の表題で最初に邦訳が出版され、戦後、木内利三郎が『ソルフェリーノの思い出』として、さらに、和介の曾孫に当たる博(拓殖大学教授)が『ソルフェリーノの記念』の題でメヂカルフレンド社から上梓している。博の翻訳には私も大いに?協力し、登場人物の絵や写真・地図などをたくさん並べ、解説を執筆した。ついでに言うなら、わが師・橋本祐子先生の『私のアンリー・デュナン伝』(学研)、と拙著『赤十字とアンリ・デュナン』(中公新書)は関心のある方にはお勧めしたい。いずれもAmazonで入手できるのではないだろうか。


国際連合の旗の旗より常に上位に、そして同等以上の大きさにしなくてはならない。

エリトリアの紋章の中央はオリーブの幼木。
我が家のベランダの鉢植え程度だが、そこには国家発展への期待がこめられている。

    


キプロスの国旗

パラグアイの国旗の表の紋章には棕櫚(左)とオリーブが描かれている。

フィジーの国旗

フィジーの国旗にある紋章。
植物はサトウキビ(左上)、ヤシ(右上)、バナナ(右下)、そしてハトが加えているのがオリーブの枝。

閑話休題。2番目のオリーブは、国連旗を筆頭に、キプロス、エリトリア、パラグアイ、フィジーの各国旗に登場する。かつては我が家の猫の額のような庭に糸杉を上、10メートル近くまで伸びていた。これは、1963年に国際赤十字創立100周年ということで、ソルフェリーノの糸杉から種を採り、茨城県の農業試験場で苗にしていただいたものを分けてもらったもの。当時の島津忠承日赤社長のお屋敷でも同じように1本が成長していたが、いまはないようだ。

今の拙宅にも小さなベランダがあり、そこには鉢植えのオリーブが2本、まだ1メートルそこそこにしか伸びていないが、成長過程にある。そんな幼木を描いたのが国家発展を祈念したエリトリアの国旗。そして、『旧約聖書』の「ノアの方舟」に由来する平和の象徴の話をそのまま描いたのがフィージーの国旗に出てくる国章の左下の図。

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