偏狭なナショナリズムは排すべし

毎日新聞(3月12日付)の社説に共鳴した。普段あまりよまない毎日新聞だが、これはいい社説だし、いまの日本にとってとても大切なことだと思う。

Nationalismを「民族主義」と訳せばいかにも偏狭な感じであり、「ナショナリズム」と書けばなんとなく新鮮な感じも加わる語感があるが、私はenlightened nationalism,「啓発されたナショナリズム」「洗練されたナショナリズム」とでも訳したい語感だ。

国旗で言うなら「日本の国旗は大切だが、世界各国の国旗がそれぞれすばらしい」。いまさら言うまでもなく、各国の国旗にはそれぞれに深い意味があり、歴史や伝説、民族や民俗、地理や国の位置、産業や産物、宗教や宗教に対する寛容、政治的立場、色彩学やデザイン学などなどさまざまな要素が込められている。


日本の国旗

アメリカの国旗

ドイツの国旗

イタリアの国旗

イギリスの国旗

ロシアの国旗

韓国の国旗

ジャマイカの国旗

ケニアの国旗

こうした事象を知れば知るほど、学べば学ぶほど各国旗に親しみが湧き、同時に、自国の国旗にも誇りや矜持を感じる。

どうかみんなで「偏狭なナショナリズム」も「偏狭な民族主義」もやめ、世界に通じるenlightened nationalismか「健全な愛国主義(patriotism)」を確立し、保持したいものだ。

「キミはキミ、ボクはボク。だが仲よく」が大好きだ。「最大多数の最大幸福」を求めないならそれは「百害あって一利なし」と考える。

毎日新聞の社説は以下の通り。

社説:差別的横断幕 「割れた窓」放置するな

窓ガラス1枚が割られたことを放置してはいけない。黙っていると窓は次々と割られて社会が荒廃するからだ。私たちは人種、肌の色、性別、宗教などを理由にしたあらゆる差別が広がる前に毅然とした態度で立ち向かわなければならない。

埼玉スタジアムで8日に行われたサッカーJリーグの浦和−鳥栖戦で浦和サポーター席へ入るゲートに日の丸とともに「JAPANESE ONLY」と書かれた横断幕が掲げられ、試合後に撤去された。

意味は「日本人以外はお断り」。かつての米国やアパルトヘイト(人種隔離)政策の南アフリカで黒人らを排斥する意図で公共施設などに掲げられた「ホワイト・オンリー」を想起させる文言だ。また、試合中にはサポーターによる差別的発言があったことも判明した。

Jリーグの村井満チェアマンは翌9日、浦和に対して徹底した調査と報告を求めるとともに差別的行為には厳正かつ毅然と対処する意向を示した。当然の対応だ。

浦和は横断幕を掲示した人物からすでに事情聴取を始めていて、今週中に報告するという。文言の意図がどうであれ、その行為の結果責任は問われなければならない。

近年、異なる意見や文化を持つ人たちに憎悪の言葉を浴びせたり、排斥したりするような事例が目立つ。一例がヘイトスピーチ(憎悪表現)だろう。そうした非寛容な社会の動きがスタジアムにも飛び火したとしたら極めて残念だ。

世界各国から選手が集まる欧州リーグではサポーターを巻き込んだ人種差別的トラブルが絶えない。差別の撲滅はサッカー界共通の課題だ。

日本サッカー協会は昨年11月、国際サッカー連盟に倣い、懲罰規定の中に差別に関する条項を追加した。差別行為をした選手に最低5試合の出場停止および10万円以上の罰金などを科すほか、クラブにはサポーターの行為についても監督責任があるとして重大な違反には無観客試合や試合の没収、勝ち点の減点などの懲罰を科すことになった。

日常生活ではめったに体験できない熱狂や興奮に包まれるスタジアムにもルールはある。差別的横断幕のように個人の尊厳を害する行為が許されないのは言うまでもない。

だが、スタジアムの秩序を求めるあまり、細かな規制や厳重な警備、厳しい罰則で応援の自由を縛るようなことは避けたい。見る側には自制と節度が求められている。

サッカーをはじめスポーツが社会に発信するメッセージは強力だ。今回の事態を重く受け止め、あらゆる差別と断固闘う決意をスポーツ界からも示したい。

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