ランズベルギスの執念も届かず 「鎌と槌」未だ禁止に至らず

「鎌と槌」の共産主義のシンボルを禁止しようという動き注目すべきがヴィータウタス・ランズベルギス(Vytautas Landsbergis、1932~ )である。この人はもとはといえば音楽理論家であるが、リトアニア(日本では杉原千畝の厚意で知られている国)の政治家として、ソ連からの独立を指導、リトアニア独立革命を指導。リトアニアがソ連から離別後は国会議長(国家元首)として活躍した。


ランズベルギス元リトアニア国家元首

リトアニアの国旗

ラトビアの国旗

エストニアの国旗

2005年1月、欧州議会議員となったランズベルギスは、ハンガリー選出議員のバックアップを得て、欧州連合(EU)がナチス・ドイツの「鉤十字」とソ連の標章の両方を禁止することを主張した。

しかし、イタリア共産党をはじめ、ランズベルギスの提案に反発する勢力が大きく、特に、ランズベルギスの提案は、イタリア共和国の政治家には殆ど支持されなかった。他方、イタリア・ファシスト党を率いたかのベニート・ムッソリーニの孫にあたる、イタリア下院議員で欧州議会議員のアレッサンドラ・ムッソリーニは、「この提案を実行することは我々の道徳的責務である」と述べ注目された。

ランズベルギスの提案に対しては、ロシア連邦議会も看過しなかった。ロシア連邦下院(国家院Duma)の第一副議長は、この提案を「異常」と切り捨て、他の同国下院議員は、「一部の欧州人は増長し、誰によってファシストから解放されたか忘れている」と述べた。

2005年2月初め、欧州委員会が全EUにおけるナチス・ドイツの標章の禁止案自体を否決したため、この論争は終結した。

日本共産党をはじめ、北朝鮮、中国、ベトナム、ネパールなど、アジア各地の共産党容認国での党旗はいずれも、この「鎌と槌」が大きく描かれている。

結局、2005年2月末に、EUは、加盟25ヶ国で、「鉤十字」などナチス・ドイツの標章を禁止する提案を却下し、「鎌と鎚」など共産主義の標章を禁止する提案も却下した。どの標章を禁止すべきだということに加盟国の合意が得られないため、主導した形になっていたルクセンブルクが提案を撤回したからである。また、この提案については、「表現の自由」を侵害するものであると懸念する意見もあった。

2013年現在、ナチス・ドイツとソ連の双方の標章を法的に禁止しているのは、ハンガリー、ポーランド、バルト三国の五カ国である。但し、フランスとドイツは「鉤十字」の標章を使用禁止としている。

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