「日の丸」を社名にしている酒屋さん – 創業300余年

恥ずかしながら知らなかった。わが郷里・秋田県に、元禄2(1689)年創業の日の丸醸造株式会社があることを。もとい、私が郷里にいたのは18歳まで。いかに酒などに目もくれない(今とはまったく違う)「立派な青年」としての日々であったかの証明でもある(とまずは勝手に胸を張る)。

先日、我が家で『べトナム ― 国家と民族』(古今書院、上下巻で11,000円の大著)の出版記念会が開かれたときのこと。阿曽村邦昭(わが幼稚園以来の5年先輩)ご夫妻をはじめ、駐ベトナム大使だった方が3人、元駐カンボジア大使だった今川幸雄さん(傘寿にして2日前にパリから戻り来週からカンボジアに出張という外務省参与)などなどインドシナを専門とする方々が大勢、お越しくださった。私を含め大半がこの本の執筆者であり、阿曽村大使が編集した。

そのときに阿曽村さんがわざわざ秋田県横手市増田町の日の丸醸造所から取り寄せて送ってくれたのが、「万さくの花」という、まさに美酒。「長生きしてよかった!」とはこんな出遭い。わが親父は亡くなるまで(戦時中も欠かさず)秋田の新政(あらまさ)を晩酌にしてきたので、他をほとんど知らないできたが、この「万さくの花」にはみんなで唸った。「めちゃ美味い!」。

早速、会社に電話して確認したが、「醸造所としては1943(昭和18)年に統制で一時廃業するまで日の丸を社名にしていたと聞いている。戦後2、3年で復活した」という。

「日の丸」という言葉はカトリックの宣教師が本国に送った報告書の中に「FINOMARU」という言葉があるので、奇とするには及ばない(詳しくは拙著『知っておきたい日の丸の話』学研新書)。また、同醸造所の資料に拠れば、元禄2年、羽前国最上(現在の山形県)出身の創業者・沓澤甚兵衛が、蔵名として「日の丸」を採用したのだそうだ。これは、秋田藩の佐竹家の紋章が鎌倉時代初期から「5本骨の扇に日の丸・月丸」であることに因んだもので、「日本で唯一無二の酒名」とのことである。


佐竹家の家紋

ただ、佐竹家の家紋は「月の丸」というのが、日本の紋章研究家では定説。もっとも、これが「日の丸」であるというのは定説以上に広まっているので、どちらでもよいと言えると思う。

とにかく、美味いものは美味い、いいものはいい。そして古いものにはかくたる歴史があるのである。

みなさまのまわりに「日の丸」についての情報があったら、お知らせください。fukiura@eri-21.jp

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