ベトナムの国名変更について専門家からの情報

「ベトナムの国名変更問題」に今春から関心を抱いています。ベトナムは1975年のベトナム戦争終結に伴い南北が統一され、76年7月2日、国名をそれまで北ベトナムの国名であったベトナム民主共和国から、ベトナム社会主義共和国と変更し現在に至っています。ちなみに、同年12月、ベトナム労働党は旧名である共産党に名称を変更しました。


紋章のベトナムという文字の上にはベトナム語で「社会主義共和国」とある。

しかし、世界で国名に社会主義と謳っているのはほかにスリランカのみで、ドイモイ(刷新)政策で社会経済体制を大幅に変更しているベトナムにはふさわしくないという声もあり、近くさらに検討される可能性もあるようです。

そこで、この国について深く研究している専門家のA氏に状況をご教示くださるようお願いしていたところ、さきほど、特別の情報をいただきました。独り占めはもったいないので、小欄で紹介します。

さて、上記国名変更問題でございますが、ベトナム社会科学院に属する複数の研究者を始め、各方面の方々に聴取し、かつ報道を確認したところ、下記の通りです。

1. 憲法改正草案に関する国民への意見聴取を実施する過程で、本年3月、4月あたりには、憲法改正に意見を具申する知識人、科学者グループを中心に、「ベトナム社会主義共和国」を1946年の最初の憲法に規定されていた「ベトナム民主共和国」に変更するなど国名から「社会主義」を削除すべき、との意見が出て、一部メディア(国の認可を受けたメディア)も、国民からこれを支持する意見があるとして、同調する報道を行う動きが確かにありました。

2. その動きが拡大するかとも見られましたが、報道によれば、5月、その結果を踏まえ、開催中の国会会期の中で、憲法改正草案編纂委員会が国会に報告するかたちで、「国名変更に関する委員会の意見」を伝達し、これを受け、「多数の国会議員が『国名の現状維持』に賛成した」と報じました。国会議員の意見として主に強調されたのは、「政治が安定し、国の目標・発展の方向性に変わりないのだから、国名を変更する理由は何もない」というものでありました。これ以後、国名変更の議論がメディア全般(反政府系を除く)からほぼ消えています。

3. 憲法改正草案は予定通り、この秋の国会で採択される模様(国会の会期期間は10月下旬から12月はじめまでの見込み)ですが、これを前に、9月初め、改めて一部メディア(例えば「税関新聞」電子版)が国名の現状維持を確保する論説を投げています。それによれば、「実際に、国名変更となると、国章の変更、国家機関の印鑑の変更、書式の変更などの変更を世界に公表する手続きを行わねばならない。より深刻なことは、国名の変更により、国民の間に戸惑いと動揺を引き起こし、敵対勢力により容易に歪曲、扇動、利用されることになる。このことは、党の指導を廃棄し、体制の変更を求める思想を生むことにつながるだろう。」とあります。これで、ほぼ明確に、党(国家)としては国名の現状維持の方針を確認したものとみられます。

4. 一方で、憲法改正草案に関する国民からの意見聴取の期間は当初6月末で終了の予定でしたが、延期され、9月末までとなっております。こうした流動的な状況を踏まえ、当方が聴取した社会学者(国名変更支持派)は、「知識人、科学者らは国名変更を訴え続けている。変更するとのサプライズも有り得ると思っている。国名の変更があった場合、憲法改正草案が採択され、新憲法の内容が公表され、はじめて国名の変更も公表されるだろう。ここで問題なのは、新憲法の内容が一体いつ世間に公表されるか判らないことだ。」ともメールで述べていました。

5. したがいまして、今般の憲法改正において、国名は現状維持の方向が強いと見られますが、少数の「国名を変更してもらいたい」と願っているグループは希望的観測を依然有しています。しかし、そのようなグループが持つ影響力は、党がよほどの失態をおかさない限り、当面は限定的と思われます。

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